楽興の時(27) みやこめっせ桜まつり2019 さくらコンサート第3部
2019年3月30日 左京区岡崎の京都市勧業館みやこめっせウェルカムホールにて
午後2時30分から、みやこめっせ「さくらコンサート」第3部を聴く。前半が二胡奏者の尾辻優衣子の演奏、後半が松井るみ(ソプラノ)、井上元気(テノール)、澤田奈央子(ピアノ)による歌曲コンサートである。
尾辻優衣子の二胡。自身のアルバムに収められた楽曲を中心としたプログラムで、伴奏は録音されたものを流すという、カラオケ版での演奏。二胡は単音しか出せないため、独奏に向いた楽器ではない。元々は京劇の伴奏楽器で、楽器としての地位も低かったが、劉天華によって中国を代表する楽器となっている。
単音の楽器ということもあり、聴かせられるものになるかどうかは別として演奏すること自体はさほど難しくはない。私も半年ほど二胡を習っていたことがあるが、「十九の春」などはすぐ弾けるようになっている。ただ弦が切れやすいため、切れないよう適度に抑えて力強く弾くということは難しく思えた。
尾辻は「二胡はヴァイオリンと原理は同じで遠い親戚」と紹介して、ヴァイオリン曲である「情熱大陸」も奏でていた。
中国人作曲家によるクラシカルな二胡の曲として最後の最後に「賽馬(競馬)」が演奏される。ヴァイオリンでいうピッチカートも繰り出され、万全の迫力に富む演奏に仕上がっていた。
歌曲コンサート。さくらコンサートということで、まず松井るみと井上元気のデュオで「さくらさくら」が歌われる。その後、イタリアの作曲家であるレスピーギ、フランスの作曲家であるグノー、プーランク、ロザンタールの歌曲が歌われる。
レスピーギは、ベルリオーズやリムスキー=コルサコフとともに三大オーケストレーションの名手に数えられており、ローマ三部作がとにかく有名だがそれ以外の曲が取り上げられる機会は少ない。歌曲を聴くのは私は初めてとなる。
グノーやプーランクは比較的有名だが、ロザンタールは作曲家としてよりも指揮者やオッフェンバックの楽曲を集めてコンサートピースとしてまとめた「パリの喜び」の編曲者として有名な人物である。1904年生まれでありながらかなりの長生きであり、「パリの喜び」の自作自演盤をデジタル録音で収めている。松井るみ独唱によるロザンタール作品として取り上げられたのは「英国のねずみ」という歌である。イギリスで生まれ育ったねずみが船に乗り、たどり着いたのはフランス。そこで英国ホテルというホテルを見つけ、屋根裏部屋でジンやウィスキーといったイギリス名物を発見したねずみは歓喜。毎夜、PARTYを開くが階下にすむフランス人達の不興を買い、というストーリーである。松井は自作の紙芝居を用意し、めくりながら歌う。エスプリのお手本のような楽曲であり、紙芝居もわかりやすかった。なお、珍しい楽曲が並んでいるが、タブレット端末にダウンロードした電子楽譜を使っているため、譜面を探し出すのにさほど苦労はしていないようである。
その後、オーストリア出身のレハールが作曲した喜歌劇「メリー・ウィドウ」より「とざした唇に」の日本語版とグノーの歌劇「ロメオとジュリエット」より出会いの場のデュオが歌われ、アンコールのヴェルディの歌劇「椿姫」から「乾杯の歌」で華やかに閉じられた。
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