楽興の時(28) 「テラの音 Vol.25 ~歌とピアノの贈り物~」
2019年4月5日 中京区の真宗大谷派小野山浄慶寺にて
午後7時から真宗大谷派小野山浄慶寺での「テラの音 Vol.25」を聴く。今回はソプラノとピアノによる演奏会である。
ソプラノは、京都市立芸術大学音楽学部音楽学科声楽専攻2回生の高田瑞希。私が接したことのある「テラの音」の出演者としてはおそらく最年少になると思われる。京都市少年合唱団修了とあるから、広上さんとも仕事をしたことがあるのだろう。
ピアノの片山梨子も京都市立芸術大学出身。第3回ジュラ・キシュ国際ピアノコンクールで第1位獲得。ポーランド国立放送交響楽団の本拠地としても知られるカトヴィツェで行われた第9回ポーランド国際ピアノマスタークラスにも出演して演奏している。現在はショパンの演奏をライフワークとしているそうである。
曲目は、まず片山梨子のピアノ独奏でショパンの「子犬のワルツ」。2曲目に高田瑞希が登場してのベッリーニの「優雅な月よ」。ここまでをプロローグとして、第1部が、中田章の「早春賦」、瀧廉太郎の「花」、「早春賦」のモチーフとされるモーツァルトの「春への憧れ」より1番、トスティの「四月(Aprile)」、トスティの「春(プリマヴェーラ)」、スカルラッティの「すみれ(Violette)」、菅野よう子の「花は咲く」、山崎朋子の「空高く」。浄慶寺の中島住職の法話を経ての第2部が、トスティの「Sogno(夢)」、ロイド=ウェバーのミュージカル「CATS」よりメモリー(日本語歌詞版)、ピアノ独奏でシューマンの『子供の情景』より「見知らぬ国々と人々」と「トロイメライ」、吉田千秋の「琵琶湖周航の歌」より1番から4番まで、木村弓の「いつも何度でも」、瀬戸内寂聴作詞の「寂庵の祈り」、久石譲の「Stand Alone」
ピアノはローランドのキーボードを使用する。
第1部は春や花を題材とした曲目、第2部には夢や希望をモチーフにした楽曲が並ぶ。
高田瑞希はお喋りな子のようで、片山に「今日は清楚なイメージで行きたい」と提案するも、「5分でばれる」と言われたそうである。
モーツァルトの「春への憧れ」は曲そのものも有名だが、モーツァルトが自身最後のピアノ協奏曲となる第27番の第3楽章に転用していることで知られている。童心に帰ったかのようなモーツァルトの憧れが感じ取れる曲だ。
菅野よう子の「花は咲く」は、高田が京都少年合唱団在団中に京都コンサートホールでの演奏会で初めてソロパートを取った思い出の曲だそうである。
「琵琶湖周航の歌」は、高田が子供の頃に子守歌として聞かされていた曲で、個人的に夢と繋がっているのだそうだ。歌詞は6番まであるが、全部やると長いので、加藤登紀子カバー版と同じ4番までが歌われた。
中島浩彰住職の法話は、現在の福島県の様子を伝えるもの。中島住職は東日本大震災発生直後から今に至るまで何度も福島を訪れているが、福島第1原発からかなり離れた二本松市や郡山市でも放射線濃度が高いため、福島を離れる人と生活があるので残る人に分かれ、残った人の中でも意見が異なり、年を経るにしたがって乖離の度合いも甚だしくなってきているそうである。政府も当初は「年間1ミリシーベルトあれば避難」という見解だったのだが徐々に甘くなり、「年間20ミリシーベルトまでは大丈夫」とするも根拠がないのでみな不安だそうだ。ただ、「もう考えるのが面倒だ」「生活が優先」ということで集会に参加しなくなった人も増えているそうである。
政府は福島であっても地産地消を勧めてくるのだが、検査が年々甘くなっており「信じきれない」ということで、ミネラルウォーターを買い、被災地以外の場所で採れた野菜を食べるようにしている家も多いそうだが、子供が幼稚園に入ると、幼稚園では政府の地産地消政策に従って福島県産の作物を使った給食が出てくる。幼稚園では給食ではなく弁当を選ぶことも可能なのだが、小学校に上がると福島県産の食物を使った給食を食べなければならなくなる。ということで子供が幼稚園に入る年齢に達したり、小学生になるタイミングで福島を離れる人もおり、残った人も父親と母親の間で意見が分かれて喧嘩になったりもしているそうである。
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