美術回廊(28) 大阪市立美術館 「フェルメール展」2019
2019年5月5日 天王寺の大阪市立美術館にて
大阪へ。天王寺の大阪市立美術館で「フェルメール展」を観る。
オランダ黄金時代を代表する画家、ヨハネス・フェルメール。43年の生涯で完成させた絵は50点ほど、現存するのは35点という寡作の画家であるため、今回の大阪での展覧会のための来日した実物は6点であり、それだけでは絵画展にならないため、同時代に活躍したオランダの画家の作品を多く展示している。
フェルメールの作品6点が一番最後に展示されており、それ以前に他の画家の作品を観て比較出来る面白味があるのだが、今日もフェルメール展は大盛況というわけでじっくり観ていたら日が暮れてしまう。今回の音声ガイドナビゲーターは石原さとみだが、これがかなりの人気で、音声ガイド貸し出し口には長蛇の列が出来ていた。
というわけで、多くの絵は一瞬だけ見て印象を頭に留めるだけで次々に絵を観ていく。
展示されているのは、フランス・ハルス、ワルラン・ヴァイヤン、ヤン・デ・ブライ、ヘンドリック・テル・ブリュッヘン、ヤン・ファン・ベイレルト、アブラハム・ブルーマールト、ニコラス・ベルヘム、ヤン・デ・ヘーム、ニコラス・マース、ヘブリエル・メツー、ヤン・ステーンといった画家の作品である。残念ながら一人も名前を知らない。ただ、これらの画家とフェルメールとでは明らかな違いがある。光の加減である。
多くの画家は暗色の中で中心にだけスポットライトが当たっているという構図なのだが、フェルメールだけ光がおぼろ、どこからか光が漏れているような間接照明的明るさなのである。ターナーや印象派へ繋がるという評価はこのことに由来しているのだと思われる。
展示されているフェルメール作品は、「マルタとマリアの家のキリスト」(1654-55年頃)、「取り持ち女」(1656年)、「手紙を書く婦人と召使い」(1670-71年頃)、「リュートを調弦する女」(1662-63年頃)、「恋文」(1669-70年頃)、「手紙を書く女」(1665年頃)。
長い間埋もれていることのある画家としてはエル・グレコが有名だが、フェルメールも実に1世紀以上埋もれていたことがあるため、フェルメール本人についての情報が十分とはいえない状況になってしまっている。そのため、その絵が何のために描かれたのかは多くが不明なのだが、「手紙を書く婦人と召使い」と「リュートを調弦する女」とでは共に人物が窓の外を眺めており、「これから起こり得る何か」を予感させるものとなっていて、想像を巡らせると楽しい。「手紙を書く婦人と召使い」では直後に何かが起こりそうであり、「リュートを調弦する女」は未来を夢見ているようでもある。
「恋文」は手紙を手渡された女の絵。本当に恋文を渡されたのかどうかはわからないようであるが、事態の急展開がありそうな予感に満ちている。
「手紙を書く女」が書いているのは、ラブレターか何かだろうか。はっきりとはわからないが、この女性の抱く希望が絵全体から溢れ出てくるようでもある。
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