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2019年7月25日 (木)

コンサートの記(581) ラドミル・エリシュカ指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団第489回定期演奏会 ドヴォルザーク 「スターバト・マーテル」

2015年6月9日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後7時から大阪・中之島のフェスティバルホールで大阪フィルハーモニー交響楽団の第489回定期演奏会を聴く。今日の指揮はチェコの名匠、ラドミル・エリシュカ。
ドヴォルザークの大曲、「スターバト・マーテル」1曲勝負である。

滅多に演奏されないドヴォルザークの「スターバト・マーテル」。私も生では一昨年の夏に広上淳一指揮京都市交響楽団ほかの演奏で聴いたことがあるだけである。録音点数も少ない。

4人の独唱者と合唱を伴う大編成の曲である。独唱は、ソプラノ:半田実和子、アルト:手嶋眞佐子(てしま・まさこ)、テノール:望月哲也、バス:青山貴(あおやま・たかし)。合唱は大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:福島章恭)。
大阪フィルハーモニー合唱団はアマチュアの団体であるが、大阪フィルハーモニー交響楽団専属の合唱団として1973年創立という歴史ある団体であり、朝比奈隆、大植英次らにも鍛えられた高度な合唱力を持つ団体である。客演合唱指揮の福島章恭(ふくしま・あきやす)は東京を本拠地にしている合唱指導者であり、また音楽評論家としても活躍している。

1931年生まれのラドミル・エリシュカ。元々は音楽院での後進育成に重点を置いていた指揮者であるが、札幌交響楽団に客演して大好評。2008年に同楽団の首席客演指揮者に就任し、今年からは札響の名誉指揮者となっている。大阪フィルにも客演して名演を展開。その他にもNHK交響楽団や読売日本交響楽団に客演している。読売日本交響楽団の大阪定期演奏会のタクトも任され、私もザ・シンフォニーホールで聴いたが、大フィルとの方が相性は良さそうであった。
札幌交響楽団とはライブCDも作成しており、スメタナの連作交響詩「わが祖国」やドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」は名盤である。
エリシュカと大フィル、大フィル合唱団はヤナーチェクの「グレゴル・ミサ」を演奏して超名演を展開しただけに期待が高まる。

なお、エリシュカは英語が敵性言語として学ぶことが禁止されていた時代のチェコスロヴァキアで青年期を送っており、英語は話すことが出来ず、チェコ語とドイツ語のチャンポンでリハーサルを行うため、通訳を通す必要があるとのことである。
字幕付きでの演奏。大フィルの今日のコンサートマスターは崔文洙。

大フィルの弦は憂いに満ちた響きを出し、エリシュカの実力の高さが窺われる。エリシュカの音楽作りの特徴として低弦をしっかり弾かせてベースを築くということが挙げられる。ドイツ的な発想であり、音全体の重厚感が増す。木管も快調であったが、金管はちょっとギクシャクした印象。先週、北ドイツ放送交響楽団の金管を聴いたばかりで、無意識に比較してしまうのかも知れない。
独唱者はドラマティックな旋律を受け持っており、4人とも優れた歌唱を聴かせる。大阪フィルハーモニー合唱団も安定感がある。

宗教音楽1曲の演奏会を聴くという行為は、コンサートに行くというより儀式に参加しているというイメージに近い。宗教音楽であるため「とても楽しい」という曲は余りない。楽しい音楽は宗教音楽としては俗にすぎるのだ。
また、聴くというより心や鼓膜が浄められるような気分になる。今回の定期演奏会と大フィルのその他の演奏会とでは趣が異なる。

宗教曲というと、やはり、J・S・バッハが偉大であり、彼の音楽に学んだり影響を受けたりということは避けることが出来ない。「スターバト・マーテル」にも大バッハの音楽のような部分もいくつかある。ドヴォルザークの個性は旋律よりも和音に出ており、「これはチェコ音楽だ」とすぐわかるような響きがしていた。

今日私が座った席からはエリシュカの指揮は余り良く見えなかったのだが(特に右手に持った指揮棒が)、端正で、時に左手で指揮棒を逆さに持ち、右手だけの指揮をする。また、指揮棒を右手に持っている時の左手も雄弁である。ディミヌエンドを左手で操る様は見事であった。指揮棒を譜面台に置いてノンタクトで指揮するときは左手主導という特徴もあった。

演奏終了後、エリシュカは喝采を浴びる。エリシュカはオーケストラメンバーも立たせようとしたが、エリシュカに敬意を払って立とうとせず、エリシュカ一人が指揮台の上で再度拍手を受けた。
エリシュカは独唱者一人一人と握手とハグを交わし、大阪フィルハーモニー合唱団のメンバーにも盛んに拍手を送った。

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