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2019年8月20日 (火)

コンサートの記(588) 久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ2019京都公演

2019年8月11日 京都コンサートホールで

午後5時から京都コンサートホールで、久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ2019京都公演を聴く。新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラであるが、組織としては新日本フィルハーモニー交響楽団と同一である。コンサートマスターは豊嶋泰嗣。

全曲、久石譲作品が並ぶというプログラム。前半が、組曲「World Dreams」(世界初演)、Deep Ocean。後半が、[Woman]for Piano,Harp,Percussion and Strings(改訂初演)、Kiki's Delivery Service Suite(交響組曲「魔女の宅急便」。世界初演)。全曲、久石譲の指揮。久石譲は、Kiki's Delivery Service Suiteの一部ではピアノも担当する。

全曲、ヴァイオリン両翼の古典配置での演奏である。


世界初演となる組曲「World Dreams」は久石らしいリリカルな作風である。「ベートーヴェン交響曲全集」なども完成させている久石であるが、指揮者として誰かに師事したということはないはずなので、基本的には拍を刻むオーソドックスな指揮を見せる。なぜか小指を立てて指揮棒を握っているのが妙に印象的である。

今回のツアーにはAプログラムとBプログラムがあり、京都公演ではBプログラムが演奏されるのだが、Aプログラムとの違いは2曲目のみである。
その2曲目のDeep Oceanは、グラハム・フィットキン作品を思わせるミニマルミュージックでこれまた現代音楽家としての久石譲の王道を行く作品である。9曲からなるのだが、5拍子の曲が目立つ。久石は5つの拍を、三角形を描く拍と上下の二つに分けて指揮した。


[Woman]for Piano,Harp,Percussion and Strings。1曲目は「草の想い」、2曲目は「崖の上のポニョ」の旋律を元にした作品である。久石オリジナルの現代音楽を目的に来たのだが、お馴染みの久石メロディーを聴くとやはり楽しい。
3曲目は「Les Aventuriers」の新編曲。久石作品の中では評価が高い曲のようだが、私は本格的に聴くのは初めてだと思う。


ラストとなるKiki's Delivery Service Suite(交響組曲「魔女の宅急便」)。クラリネット奏者、トランペット奏者、トロンボーン奏者が立って演奏するなど、ソロ的な見せ場があり、コンサートマスターの豊嶋泰嗣にもソロが用意されている。マンドリンやアコーディオンを入れた編成で、幼時へのノスタルジアが掻き立てられるような仕上がりとなっていた。「魔女の宅急便」は、架空のヨーロッパを舞台とした映画とされているが、久石が書いた音楽は、スタジオジブリ作品の中でも日本人の琴線に最も触れやすい旋律に満ちている。


アンコールとしてまず久石譲のピアノによる「あの夏へ」が演奏される。懐かしくも切ない思い出も多い今の季節に最も相応しい楽曲である。

アンコール2曲目は、「ハウルの動く城」のために書かれた「Merry-go-round(人生のメリーゴーランド)」。聴き手の想像がどんどん広がっていくような曲と演奏である。


渡邉暁雄によってアメリカのオーケストラを目標に組織された日本フィルハーモニー交響楽団を前身とする新日本フィル。日フィル争議によって小澤征爾と共に日本フィルハーモニー交響楽団を飛び出したメンバーによって結成されているが、残されたメンバーによって市民のための楽団として再スタートした現在の日本フィルよりも新日本フィルの方がよりアメリカ的な音楽スタイルを指向しているように思われる。小澤征爾が長きに渡ってボストン交響楽団の音楽監督を務めていたことと関係があるのかどうかはわからないが、映画音楽をベースとした作品の演奏には、やはりアメリカ的な感性を追求するオーケストラが合っており、今日も艶のある音色と明るい響きによって久石作品に込められた夢を広げていた。


ポピュラー系の聴衆が多いということもあってか、客席はほぼオールスタンディングとなり、新日フィルのメンバーが下がってからも久石譲が一人現れて喝采を受けるという、俗にいう一般参賀も行われた。久石譲は大袈裟に手を振って笑いを誘っていた。

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