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2019年8月17日 (土)

観劇感想精選(313) オフィス3○○ 音楽劇「私の恋人」

2019年8月9日 西宮北口の兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールにて観劇

午後7時から、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで、オフィス3○○(さんじゅうまる)の音楽劇「私の恋人」を観る。原作:上田岳弘(たかひろ)、脚本・演出・衣装・出演:渡辺えり。出演:小日向文世、のん、多岐山壮子、松井夢、山田美波、那須野恵。ミュージシャン:三枝伸太郎。歌唱指導:深沢敦。

のんはこれが初舞台。兵庫県出身ということで(そもそも能年という苗字は兵庫県固有のものである)凱旋公演となる。東京の東大和市でプレビュー公演が行われたが、本編の上演は今日が初日となる。

3○○にちなみ、主演俳優3人が30の役を演じるという音楽劇である。

まず、下手客席入り口から小日向文世と渡辺えりが登場。小日向文世は、「歌なんか歌いたくないよ」と文句を言い、「ミュージカルみたいに突然歌い出すの? 変だよ、みっともないよ」と続ける。渡辺えりが、「それは偏見」と言うべきところを「それは先見」と言ってしまって言い直す。初日ということでまだセリフが完全にものになっていないようで、小日向文世も中盤の「おやじが死んで」と言うべきセリフを「俺が死んで……、俺は死んでないよな」と言い直していた。

冒頭に戻るが、小日向文世がぐずるので渡辺えりが一人で歌おうとするが、まさに第一声を発しようとした瞬間にのんが上手から駆け込んできて、奪うようにして歌い始めてしまう。のんは渡辺えりに譲りそうな気配を見せるも、結局、全編歌う。渡辺えりが、「あんた誰?」と聞くと、のんは「まだ誰でも」と答える。
その場に歌いたい女が二人、歌いたくない男が一人でということで、のんが「ならば、踊ろう!」と提唱してダンスが始まる。

 

メインとなるのは、井上由祐(のん)と主治医の高橋(小日向文世)の物語である。井上は前世ではナチ圧制下のドイツで過ごしたユダヤ人、ハインリッヒ・ケプラーであり、そのまた前世は10万年前のクロマニヨン人であった。由祐は10万年前の前前世から「私の恋人」を探しているのだが、まだ見つかってはいない。

一方、由祐の主治医でありながらどう見ても精神を病んでいそうな高橋は、二度の行き止まりを迎えた人類の旅を切実に体験するため、絶滅した優秀なタスマニア人が見た景色を求めてオーストラリアに旅に出る。道中、高橋はキャロライン(キャリー)という女性と出会うが、のちに由祐は彼女こそが「私の恋人」であると見なすことになる。

由祐の双子の弟である時生(渡辺えり)は、子供の頃からずっと引きこもりであり、良い大学から良い企業へと就職した兄に劣等感を抱いていた。二人の父親(小日向文世)は東北で時計屋を営んでいる。時生は「断捨離」を提唱するのだが、父親が残してきた雑多なものは断捨離などしなくても東日本大震災の津波で全て失われてしまうことになる(渡辺えり独自の視点だと思われるが、日本に於ける一度目の行き止まりが敗戦で、二度目が東日本大震災とされているようである)。

やがて老境に達した由祐(小日向文世)の下(もと)に未来の由祐(のん)がやって来る。小日向文世が演じる由祐は今もまだ「私の恋人」に出会えていないが、それは実は未来の由祐が未来からの操作を行っていたことが原因であった。

なぜ、過去を操ろうとするのか?

ラストでは、高橋が神の視点からの発言も行う。看護師の川上(渡辺えり)は、「狂っている」と一蹴するが、高橋は「神は狂っている」と断言する。

 

のんは初舞台の初日ということで、セリフが舞台に馴染んでいない印象を受ける。想像通りの演技をする人で才気を感じるタイプではなく、よく言えば等身大の演技をする人だが、元々が女優としては特別美人でも飛び抜けて可愛いというわけでもなく、同級生にいそうなタイプというポジションにいた人だけにこうした演技があるいは彼女の真骨頂なのかも知れない。「のんはのんだった」ということである。
歌手としても活動しているのん。歌は特段上手いということはないが、美声である。

 

2016年の大河ドラマ「真田丸」放送時に、若い頃の写真が堺雅人に似ていると話題になった小日向文世。今日は様々なかつらをかぶって色々な役をこなしていたが、髪があると今でも小日向文世は堺雅人に似ている。骨格が似ているということもあってか、声も同じ系統であるようだ。

 

カーテンコールで、渡辺えりから、初舞台の初日を地元の兵庫で迎えた感想を聞かれたのんは、「素直に嬉しいです」と答えていた。

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