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2019年8月 2日 (金)

コンサートの記(583) ジョン・アクセルロッド指揮 京都市交響楽団第592回定期演奏会

2015年7月19日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都市交響楽団の第592回演奏会を聴く。今日の指揮者はアメリカ出身のジョン・アクセルロッド。

アクセルロッドと京響の共演は3回目。実は最初の客演の時はアクセルロッドが京都に来られないということでキャンセルになり、その約半年後にアクセルロッドが来日して、当初予定されていた定期演奏会と同じ演目で演奏会が行われ、好評を得た。外国人指揮者で京響の指揮台に頻繁に立つ人は稀であり、アクセルロッドが京響のメンバーから支持されていることがわかる。


今日は、「海」をテーマにしたプログラム。ブリテンの歌劇「ピーター・グライムズ」より「4つの海の間奏曲」、ドビュッシーの交響詩「海」、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」が演奏される。

今日のコンサートマスターは泉原隆志。今日は3曲ともコンサートマスターによるヴァイオリン独奏があり、泉原は大活躍する。フォアシュピーラーは渡邊穣。オーボエ首席奏者の高山郁子は前後半共に出演。フルート首席の清水信貴、クラリネット首席の小谷口直子は今日も後半のみの出演である。トランペット首席のハラルド・ナエスはドビュッシーの「海」からの出演となったが、「海」ではトランペットではなくコルネットを稲垣路子と共に吹いた。前半のトランペット首席の位置には早坂宏明が座る。後半はハラルド・ナエスが首席の位置に着座して演奏した(早坂は後半は出演せず)。

午後2時10分頃からアクセルロッドによるプレトーク(通訳:尾池博子)がある。アクセルロッドは「今月は特別な月です。祇園祭があり、海の日があり、また台風によるお出迎えがありました」と言って笑いを取る。今日取り上げる3曲にはいずれも嵐の海の描写が登場する。
アクセルロッドは、ブリテンの「4つの海の間奏曲」についてはベートーヴェンの楽曲との類似性を語り、ドビュッシーの「海」については「新しいハーモニーの誕生」と評価し、リムスキー=コルサコフ「の「シェエラザード」についてはハッピーエンドで終わる内容に言及する。ブリテンの「4つの海の間奏曲」は嵐を描いた4つめの間奏曲の後で主人公のピーター・グライムズが死んでしまうため5つ目の曲は登場しないと語り、「シェエラザード」との違いを明確にする。

今日はアクセルロッドは全曲ノンタクトで指揮。譜面台に総譜を置いてめくりながら指揮するが、譜面はたまに確認するだけであり、ほとんどは頭に入っているようである。
指揮姿は拍を刻んだり、手で空中に円を描いたりと多彩。たまにダンスのように体を激しくくねらせ、彼がレナード・バーンスタインの弟子であることを再確認させる。

ブリテンの歌劇「ピーター・グライムズ」から「4つの海の間奏曲」。イギリスが生んだ初の天才作家といわれるベンジャミン・ブリテンの音楽は詩情とマジカルな響きに満ちている。神秘的な音楽であるが、京響はそうした音楽を再現するのに相応しい輝きのある音を奏でる。
アクセルロッドと京響によって生み出される演奏はスケールが大きく、音の潮の中に聴衆を巻き込んでいく。

ドビュッシーの交響詩「海」。フランス語圏のオーケストラで聴くとエスプリに満ちた音が耳を楽しませてくれるが、京響は音に潤いはあるものの、グラデーションに関してはそう多彩ではない。
京響のメカニックは高く、トランペットがちょっと躓くミスがあったが、それも気が付かない人は気が付かない程度であり、質の高い演奏が繰り広げられる。

リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」。この曲は京響常任指揮者の広上淳一が得意としており、彼の常任指揮者就任記念演奏会で演奏され、その数年後に京響の大阪公演でも「シェエラザード」は取り上げられている。
広上指揮の「シェエラザード」はスケール豊かで優雅さと迫力を兼ね備えたものであったが、アクセルロッドの指揮する「シェエラザード」はより切迫感がありダイナミック。たまに音の流れが悪いところが散見されるが、全体としては優れた演奏となる。泉原のヴァイオリンソロはスケールよりも美しさを優先させたものであり、手弱女的なシェエラザードであった。
金管は輝かしく、木管には品がある。弦楽の響きも充実。打楽器奏者達が生む音にも迫力がある。

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