コンサートの記(592) 「chidoriya Rocks 70th」
2019年8月27日 左京区岡崎のロームシアター京都メインホールにて
午後6時から、ロームシアター京都メインホールで、「chidoriya Rocks 70th」を聴く。屋敷豪太プロデュースのロックフェスティバルである。出演は、屋敷豪太、藤井フミヤ、奥田民生、槇原敬之、スティーヴエトウ(パーカッション)、有賀啓雄(ベース)、斎藤有太(キーボード)、真壁陽平(ギター)、トオミヨウ(キーボード)、山本タカシ(ギター)、Dub force、宮川町舞妓・芸妓。
前半は、宮川町の舞妓と芸妓による舞と、屋敷豪太のレゲエバンドであるDub forceの演奏。後半は槇原敬之、奥田民生、藤井フミヤのライブとなる。
まずは、宮川町の舞妓と芸妓による舞。2曲ほど終わったところで、芸妓と舞妓が横一列になり、手を繋いで後ろ向きで登場する。中に白い着物の男が混ざっているのだが、どう見ても槇原敬之。というわけで、槇原敬之が小唄「酒と女」を唄い、芸妓が舞う。
槇原敬之は、昨日、京都入りして、小唄のお師匠さんとお手合わせをして貰ったそうだが、ずっと正座していたため足がしびれ、小唄よりも足の方が大変だったそうである。
レゲエバンド、Dub force。いとうせいこうがヴォーカル的な役割を務めるのだが、正確には歌うのではなくてポエトリーリーディングを行う。毎回「浜辺」を語尾に持ってくるラップ調の(おそらく)自作詩と、田中正造が書いたという詩がレゲエのリズムに乗せて読み上げられる。
詩と詩の合間に奥田民生が登場してギターソロを奏でて去り、その後、藤井フミヤがハーモニカを吹きながら下手から登場し、ステージを横切って上手に消えていった。いとうせいこうが、「今日、色んな人来ますね」と客席に語りかける。
後半、平和への感謝の黙祷が捧げられた後で、まずは槇原敬之が登場。2曲歌った後で、屋敷豪太が、20年ほどイギリスで暮らしていた時に、日本で流行っていた槇原敬之の音楽が心に響いたという話をする。ということで屋敷がノスタルジアを感じたという「遠く遠く」が歌われる。
そして、屋敷豪太のリクエストによって、カバーが歌われる。「京都らしい曲」「昭和を感じさせる」「しかもベンチャーズ」ということで屋敷が選んだのは、渚ゆう子の「京都慕情」。「ビブラートが大事」と屋敷が言い、槇原も歌った後で「いつもより嫌らしくビブラート掛けてみました」
屋敷がスネアドラムを交換している間、槇原のトークの時間となり、「『京都慕情』を知ってる人」と客席に聞くが、手を上げたのは半分ほど。ただこれでも「結構知ってますね」という部類に入るようである。「皆さん、京都の方ですか?」と聞いた時も、手を上げたのはやはり半分ほどであった。
最後は、槇原が、「知っている人は歌って下さい。知らない人もなんとなくで歌って下さい」と言って、出世作である「どんなときも」が歌われ、盛り上がった。
奥田民生。chidoriya Rocksへは2年連続の登場である。屋敷が2年連続で出てくれたことへの礼を述べるが、奥田は「連続で出ないと……、忘れられる」と言っていた。最近は、野外のライブがことごとく雨で中止となっているそうで、「昔は、超晴れ男だったんだけど」「てるてる坊主代わり。出ると晴れるから」「フェスというフェスに出まくっていた」「最近は、雨男になって来てる。人生、(晴れと雨が)丁度になるようになってるのかな」と語っていた。
「愛のために」が歌われた後で、屋敷が「イージュー」について奥田に聞く。イーは「CDEのE」(3番目)で「ジューは十」、つまり「30歳のライダーでいいの?」
「イージューライダー」は、奥田民生が30歳の時に作った曲なので、意味はそれで合っているそうだ。今は奥田民生も50歳を超えているため、「G(ゲー)ジューライダーでもいいですよ」と語り、「イージューライダー」が演奏される。
屋敷の奥田へのリクエストは、ビートルズナンバーである「Come Together」。奥田民生と屋敷豪太は、昔、井上陽水らと、ジートルズというビートルズのコピーバンドをやっていたそうで、奥田民生がジョージ奥田、屋敷豪太がリンゴ屋敷を名乗っていたのだが、井上陽水はなぜか日本風の井上ジョンという名前だったそうである。
奥田のラストナンバーは、「嵐の海」。演奏中に下手袖から藤井フミヤが手拍子にステップを踏みながら登場して歌に加わり、「全部君のせい」という歌詞を「全部民生のせい」に変えて歌う。ラストは奥田のギターと藤井のハーモニカでのセッションも行われた。
藤井フミヤの歌を生で聴くのは2度目。前回は、吹田市にある万博記念公演での情熱大陸ライブで聴いている。もう10年ほど前の話だ。藤井は無料パンフレットにもなんちゃって京都弁によるコメントを寄せていたが、ステージでも京都弁を模したトークを行う。
大ヒットナンバーである「True Love」でスタート。オリジナルに近くなるようにと真壁陽平は12弦ギターを演奏。藤井も喜ぶ。
2曲目は最新アルバムに収録されているという3拍子の曲。藤井は舞台上でくるくる回りながら器用に踊ってみせる。
槇原敬之とのコラボレーションも用意されており、槇原敬之の作詞・作曲、藤井フミヤの歌唱で発表された「着メロ」が二人で歌われる。
槇原が作った曲だが、元々藤井に贈ることを想定した書かれたためか、キー自体は藤井の方が合っている。二人は以前、「ミュージックフェア」で共演したことがあるそうで、槇原はその時のことを覚えているが、藤井の方は「記憶に残ってない」そうである。年を取ったため、物忘れが激しくなったそうで、「嫌なことを忘れられるのはいいが、良いことも忘れてしまって、結局、なにも覚えてない」という状態になることもあるらしい。
今日の客層であるが、藤井フミヤのファンが最も多いようで、ラストで歌われた「NANA」では多くの人が同じ振りによるハンドサインを行っていた。
アンコールでは、まず宮川町の芸妓と舞妓が「宮川音頭」で舞う。歌も踊りも一緒だが、歌舞練場で聴くのとライブ会場でポピュラー楽曲の合間に聴くのとではかなり印象が異なる。
それから、宮川町の芸妓と出演者による舞台上でのお座敷遊び「トラトラ」が行われる。体全体を使って行われるジャンケンのようなもので、「虎」「槍」「老婆」という3つの選択肢がある。「虎」は「槍」に刺されて負けるが、「老婆」には勝つ。ただ、「老婆」は「槍」を持った男の母親であるため、母は強しで「老婆」の勝ちとなる。
「トラトラ」で芸妓との勝負に挑むのは、槇原敬之、いとうせいこう、奥田民生の3人。
槇原敬之は「虎」で「槍」の芸妓に負ける。罰ゲームとしてお酒を飲むか、一発芸をやるかのどちらかを選ぶことになるのだが、「お酒が飲めないので」ということで、槇原は和田アキ子の物真似で「あの鐘を鳴らすのはあなた」を歌う。結構似ている。いとうせいこうは「老婆」で「虎」の芸妓に負ける。ということですぐに和田アキ子の物真似で「あの鐘を鳴らすのはあなた」を歌う。
最後は奥田民生。昨年のchidoriya Rocksでも「トラトラ」に挑戦して負けているのだが、「罰ゲームで飲んだ酒、俺のだからね。罰ゲームでもなんでもない」
奥田は「槍」を選ぶのだが、芸妓は「老婆」で来たため今年も負け。「お酒が飲めないので」と嘘を言って、やはり和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」を歌い始めてしまう。和田アキ子の物真似の際によくやられるように、音をハ行に変えて(「はなたにはへて良かった」)の歌唱である。
メンバー紹介があり、藤井フミヤは和田アキ子の「笑って許して」を歌いながら登場して、周りから「本当はやりたかったんじゃないの」と言われていた。
アンコールで歌われるのは、「ありがとう」。奥田民生が井上陽水とともに作った曲だが、奥田はメインボーカルの位置を藤井に譲ったため、藤井から「そんな遠慮することないのに」と言われていた。年上なので藤井に譲ったのだが、藤井は奥田と槇原の年齢をよくは知らない。奥田が自分の方が年上だというので、藤井は槇原に年を聞き、「50です」と槇原が返すと「若いね!」。ただ、奥田が「54」と答えると素っ気ない対応をしたため、奥田に突っ込まれる。どうも奥田は年相応に見えたらしい。藤井フミヤは57歳だそうだが、屋敷から「ダブルG(ゲー)ジュー(100歳)まで生きようよ」と言われているそうである。
最後は、客席に出演者からおひねりやグッズが投げられ、舞台上での記念撮影が行われて、ライブは幕となる。緞帳が下りる際、屋敷豪太と夫人で本公演演出の屋敷朋美が肩を寄せ合い、絵になっていた。
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