コンサートの記(591) ペーター・ダイクストラ指揮 京都市交響楽団第637回定期演奏会 ハイドン 「天地創造」
2019年8月25日 京都コンサートホールにて
午後2時30分から、京都コンサートホールで京都市交響楽団の第637回定期演奏会を聴く。指揮はオランダ出身のペーター・ダイクストラ。第九が聴きたくなるような名前の指揮者だが、演目はハイドンのオラトリオ「天地創造」全曲である。8月には定期演奏会を行わないオーケストラが多い中で、京響は奮闘中。毎年8月は合唱付きの宗教音楽を上演するのが恒例となっている。独唱は、盛田真央(ソプラノ)、櫻田亮(さくらだ・まこと。テノール)、青山貴(あおやま・たかし。バス)。合唱は京響コーラスが務める。
ハイドンのオラトリオ「天地創造」は3部からなる作品であり、今日は第1部と第2部の間に休憩が入る。
ペーター・ダイクストラは、1978年生まれ。ハーグ王立音楽院とケルン音楽大学、ストックホルム音楽大学で指揮と声楽を学んだ後、合唱指揮をエリック・エリクソンやトヌ・カリュステらに師事。2003年にエリック・エリクソン・コンクールで優勝している。
合唱指揮者としては、バイエルン放送合唱団の芸術監督を2005年から11年間務め、2007年から2017年まではスウェーデン放送合唱団の音楽監督も兼任している。2015年からは祖国のオランダ室内合唱団の首席指揮者の座にある。
オーケストラの指揮者としては、バイエルン放送交響楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、スウェーデン放送交響楽団、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団などと共演。日本では、東京都交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団の指揮台に立った経験がある。
今日の京都市交響楽団のコンサートマスターは泉原隆志。フォアシュピーラーに尾﨑平。
第2ヴァイオリンの客演首席は今日は有川誠。チェロの首席には客演のルドヴィート・カンタが入る。指揮者と向かい合う形に置かれたフォルテピアノは西聡美が弾く。クラリネット首席の小谷口直子は降り番(この人は忙しいので、基本、夏のシーズンはいない)、トランペット首席のハラルド・ナエスもいないが、他の管楽器は首席が並ぶ。
ドイツ式の現代配置だが、バロックティンパニを採用した演奏である。
ダイクストラが古楽演奏の本場であるオランダ出身ということもあり、弦はビブラートを極限まで抑えたピリオドアプローチでの演奏である。これによって弦の透明度が増し、第1部第7曲の小川の流れの描写などは胸がすくような清流として聴き手の耳に届く。レナード・バーンスタイン指揮バイエルン放送交響楽団のような超人的スケールの「天地創造」もいいが、今日のようなすっきりとして生命感溢れるという演奏も理想的であるように思う。
ダイクストラはかなりの長身ということもあり、先に「指揮台に立」つと書いたが、実際は指揮台不要でステージにそのまま立って指揮する。指揮台を使うと逆に演奏しにくくなってしまうだろ。拍を刻む明確な指揮をする人で、合唱の部分では一緒に歌って口の形でも指揮する。第1ヴァイオリンの奏者達は、いつも以上に楽しそうな表情を浮かべて演奏していた。
全般を通して分離のくっきりした演奏となっており、楽曲の把握がかなりしやすい。京響コーラスと3人の独唱者も充実した歌唱を聴かせる。アルトが必要(全てのパートが賛歌する必要があるため)なラストは、京響コーラスのメンバーがステージ前方に移動して独唱を担った。
なお、第1部と第2部では指揮のダイクストラを挟んで上手に櫻田亮と青山貴という男性2人、下手に盛田真央という布陣だったが、第3部では盛田と櫻田が席を入れ替えての歌唱となった。
京響のメカニックは強靱であり、合唱は発音がドイツ語圏の人にどう捉えられるのかはわからないが(私はドイツ語を勉強したことがないので判定不可能)、全体としては世界レベルでも十分に通用する出来だと思われる。
見通しの良い音楽を作ったダイクストラ。駄洒落でなく本当に第九の指揮に来て欲しくなる。
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