美術回廊(37) 京都浮世絵美術館 「二つの神奈川沖浪裏」
2019年9月10日 四条の京都浮世絵美術館にて
四条通にある京都浮世絵美術館に入ってみる。ビルの2階にある小さな私設美術館。中に入るのは2度目である。
前回は将軍家茂の上洛を題材にした浮世絵が並んでいたが、今回は葛飾北斎没後170年企画ということ「二つの神奈川沖浪裏」と題した展示が行われている。二つの「神奈川沖浪裏」は、色彩が異なるが、元の絵は一緒であり、光の加減で色彩の差は余り気にならない。
それよりも北斎の「富嶽三十六景」に収められた他の絵が面白い。「東都浅草本願寺」(現在の浄土真宗東本願寺派東本願寺の前身)や「江都駿河町三井見世略図」(三井越後屋の図)のように入母屋の三角屋根と富士を並べた構図などはかなり大胆で面白い。
私の出身地である千葉市にある登戸(のぶと)から富士を描いた「登戸浦」も面白い。鳥居の向こうに小さく富士が描かれているのだが、これは古代からの富士山岳信仰を連想させる。日英中の三カ国語で解説が書かれているのだが、日本語では「千葉市中央区登戸」とあるのに、中国語では(千葉県中央区登戸)と書かれていて少し奇妙な印象を受けた。
「甲州三坂水面」は、河口湖に映る逆さ富士を描いたものだが、富士本体は夏の姿である黒富士であるのに対して、湖面に映る富士は雪を戴いており、リアリズムを超えた美しさを感じることが出来る。
丸い桶の向こうに富士が見える有名な「尾州不二見原」や、「武州千住」などは何よりも構図を優先させた浮世絵だが、一昨日見たウィーン分離派の絵画にも見たままではなく再構築を行う傾向は見られる。パリとは異なり、ウィーンでジャポニズムが流行ることはなかったが、画家達は浮世絵を入手していて、影響を受けている。似通っているのは、偶然ではないだろう。
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