美術回廊(34) 京都国立博物館 ICOM京都開催記念「京博寄託の名宝-美を守り、美を伝える-」
2019年9月5日 京都国立博物館にて
京都国立博物館で、ICOM京都開催記念「京博寄託の名宝-美を守り、美を伝える-」を観る。
明治古都館が内部公開されているので入ってみる。以前は、明治古都館が京都国立博物館の本館で、ここで展示が行われていたのだが、平成知新館が出来てからはメインの展示場が移り、明治古都館は老朽化のため改装工事が行われていた。明治古都館の内部には京都国立博物館の歴史を示すパネルが展示されており、デジタル復元された俵屋宗達の「風神雷神図屏風」が飾れていた。
平成知新館の3階には、野々村仁清(ののむら・にんせい)や奥田穎川(おくだ・えいせん)らの陶器が展示されており、中国・宋代の青白磁器なども並んでいる。
2階は絵画が中心であり、伝平重盛像と伝源頼朝像が並んでいる。神護寺蔵の国宝だが、以前は「伝」ではなく、平重盛像・源頼朝像であった。今は「疑わしい」ということになっており、平重盛像の正体は足利尊氏で、源頼朝像といわれていたものは実は足利直義の肖像なのではないかという説が登場して、正確なことはわからないということで「伝」がつくようになっている。絵の作者は藤原隆信とされていたが、これも正確にはわからないようである。
狩野派の絵画も並ぶ。狩野元信の「四季花鳥図」は、屏風絵の大作であるが、手前を精密に描き、背景をぼやかすことで広がりを生んでいるのが特徴である。「風神雷神図屏風」の本物もある。よく見ると風神も雷神も手が思いっ切りねじれていて不自然である。あるいはこの不自然さが逆に勢いを生み出しているのかも知れない。そして風神や雷神は人間とは違うのだということが示されているようにも思う。
1階には仏像、そして中国の北宋と南宋の絵画が並んでいるのだが、日本の絵画をずっと観た後で、中国の絵画を眺めると西洋画を前にしているような錯覚に陥るのが面白い。宋代の絵画はフレスコ画に似たところがある。
その後は、書跡が並ぶ。三筆の空海、三蹟の藤原行成らの書が並ぶ。後鳥羽上皇が隠岐で書いた宸翰もある。後鳥羽上皇の遺書となったものだが、後鳥羽上皇の手形が朱で押されている。昔の人のものなので手は小さめだが、指が細くて長い。
更に袈裟や小袖などの衣類、豊臣秀吉所用の羽織や徳川家康所用の胴着が展示され、最後は刀剣や仏具などの金工、経箱や硯箱などの漆工が並んでる。日本だけでなく、ヴェネツィア製の鏡が唐鏡として展示されていた。
重要文化財に指定されている「黒漆司馬温公家訓螺鈿掛板」が立てかけられている。司馬温が子孫に残した家訓で、「金を残しても子孫がそれを上手く運用出来るとは限らない。本をたくさん残しても子孫がそれをちゃんと読むとは限らない。子孫長久となすには徳を積むに如くは無し」という意味のことが記されていた。琉球王朝の尚氏に伝わった者であり、今は三条大橋の東にある檀王法林寺の所蔵となっているそうである。
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