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2019年10月 7日 (月)

観劇感想精選(320) 青年団 「走りながら眠れ」2019京都公演

2019年10月3日 THEATRE E9 KYOTOにて観劇

午後7時30分から、東九条のTHEATRE E9 KYOTOで青年団の「走りながら眠れ」を観る。作・演出:平田オリザ。古屋隆太と能島瑞穂による二人芝居である。

THEATRE E9を訪れるのは初めてであるが、観客としてはかなり使いづらい小屋という印象を受ける。絶妙に危なそうな段差があるし(実際、帰り道に後ろの方で転倒したお客さんがいた)。
多分、もう当分行くことはないだろう。


「走りながら眠れ」は、青年団が1992年に初演した二人芝居である。登場人物は、アナキストとして史上最も有名な人物である大杉栄と伊藤野枝の二人だけ(二人芝居なので二人だけなのは当然なのだが、大杉栄と伊藤野枝で二人芝居というのは特殊である)。大杉栄と伊藤野枝は、関東大震災の直後に、憲兵大尉の甘粕正彦らによって扼殺されたことでも知られている(甘粕事件)が、この芝居では甘粕事件も描かれないし、二人のアナキスト的面は意図的に封印されており、なんとなくおどろおどろしいイメージもある二人の何気ない日常を描いている。
ある意味、最も平田オリザ的ともいうべき、物語を動かすのではなく空間と時間を埋めるようにセリフが置かれていく手法が顕著であり、大杉栄と伊藤野枝でありながら大杉栄でも伊藤野枝でもない二人と時間を過ごせば良いだけである。大杉栄と伊藤野枝に関する知識があれば、奥行きが出て見えるのも確かであるが、それは観る側の問題であって、今目の前で演じている二人の俳優がしていることとは直接的な関係はないのだと思われる。そもそも平田オリザがそういうことを嫌う人である。

というわけで、観ていればいいのである。それだけである。そういうものであっても構わない、というよりそうあるべきである。
そもそも大杉栄も伊藤野枝もかなりぶっ飛んだ人なので、普通にしていてもその辺の男女にはならない。明らかに宮澤賢治と思われる人を野枝が見掛けていたり、大杉栄がいう「内田さん」というのが内田百閒らしかったり(平田オリザが内田百閒のことを無料プログラムに書いているので多分そうだろう)、二人で『ファーブル昆虫記』を翻訳する過程でのやり取りが見られたり、大杉が高踏派と目されていた時代の芥川龍之介を嫌っていたり(芥川の自殺が昭和2年、大杉栄が殺されるのがその4年前の大正12年なので、芥川が狂気の作家となることを大杉は知る由もない)と様々な人物が話に出てくるが、まさにその時代にいるようにして観るのが最も面白いはずである。


それにしても劇場の空調が酷い。始まって早々は「空調がないのか?」と思われるほどに暑い。ジャケットを脱がなければならない羽目になったのは多分初めてである。お陰で体調が悪くなってしまう。その後、クーラーが入るが、古屋隆太は最初はスーツ姿で登場するため、難儀したかも知れない。


終演後に平田オリザによるトークがある。かなり前に書いた作品なので、内容を聞かれても答えられないと平田は最初に語る。まあ、そのままの作品なので聞かれてもそのまましか返しようがないのであり、変に解釈するのは野暮この上ないことである。
平田オリザは、兵庫県豊岡市に新たに設営される予定の専門職大学の学長に就任する予定であり、6月に豊岡に移り住んで「関西の人間になりました」と語る。東京と地方演劇の現在や豊岡での演劇祭のことなど、当事者しか持っていない情報を聞くことが出来てかなり興味深かった。

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