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2019年10月 5日 (土)

楽興の時(32) 真宗大谷派唯明寺 「テラの音 vol.6」 アンサンブル・ヴェルデ

2019年9月26日 京都・紫野の真宗大谷派唯明寺にて

午後7時から、紫野にある唯明寺(ゆいみょうじ)で、「テラの音 vol.6」を聴く。「テラの音(ね)」はその寺院で行った回数をナンバーとして振っており、唯明寺で行うのが6回目ということで、「テラの音」というイベント自体はもっと数多く行われている。
「テラの音」は、真宗大谷派の寺院で行われることが多いが、唯名寺も真宗大谷派であり、節談説教を行うことでも知られる亀田晃巖住職は、真宗大谷派山城第2組(そ)の組長(そちょう)でもある。

今回は、同志社女子大学音楽学科OGによって結成されたコーラスグループ、アンサンブル・ヴェルデ(松田慶子、高畠菫、大西奈絵、田中美緒、横井優夏、村上友理、岸田典子)による合唱の公演である。「テラの音」企画発案担当で、ヴァイオリニストの牧野貴佐栄(まきの・きさえ)も同志社女子大学音楽学科OGであり、今は同校の非常勤嘱託職員などもしているため、仲間内での公演となる。

アンサンブル・ヴェルデは、「リラックスさせたり癒やしたりする“緑”のようにフレッシュな音楽を届けよう」ということで名付けられたようだが、チラシに書かれた文章の文字が小さかったため、亀田住職は、「緑(みどり)」ではなく「縁(えん)」と読み間違えて紹介していた。東京ヴェルディというチームがあるため、サッカーに興味のある人はヴェルデがイタリア語で緑という意味だと知っているのだが、亀田住職はサッカーには詳しくはなかったようである。
アンサンブル・ヴェルデというグループ名だからといって、普段は緑の衣装で合わせるということはないのだが、今日は特別に緑系や青系というそれらしいドレスでまとめてきたそうだ。

 

「ボス」と呼ばれているピアニストの岸田典子がアンサンブル・ヴェルデの結成者なのだが、岸田は今年35歳で、他のメンバー6人は8歳下だそうである。岸田が同志社女子大学卒業後に、同志社女子大学声楽専攻の助手として合唱のピアノ伴奏をすることがあったのだが、そこで目に付いた6人をスカウトして結成されたのがアンサンブル・ヴェルデだそうである。個性的な子を揃えたいというので、「声が良く出る」、「面白い」、「笑顔が良い」など、一芸に秀でた子を選んだようだ。メンバーは普段は学校の先生をしていたり、OLだったりと、普通の社会人生活を送っているそうである。

 

曲目は、第1部が、「めばえ」、「おんがく」、「犬がしっぽをみて歌う歌」、「秋」、「雪の街」、「夢みたものは」、「鴎」(以上、木下牧子作曲)。源田俊一郎編曲の「女声合唱のための唱歌メドレー」(「故郷」~「春の小川」~「朧月夜」~「鯉のぼり」~「茶摘」~「夏は来ぬ」~「我は海の子」~「村祭り」~「紅葉」~「冬景色」~「雪」~「故郷」~)。
第2部は、ボブ・チルコットの「A Littele Jazz Mass」、岸田典子のピアノ独奏による「里の秋」、瀬戸内寂聴作詞・千原英喜作曲による女声合唱とピアノのための組曲「ある真夜中に」

「めばえ」を無伴奏の合唱で歌った後、メンバーの一人一人が独唱という形で木下牧子の作品を歌っていく。アンサンブル・ヴェルデは来年、大阪府高石市のアプラたかいし小ホールでソロコンサートを行う予定があるのだが、そこでも木下牧子作品を取り上げる予定である。
コーラスグループのメンバーということで、独唱だと弱い感じは否めないが、メンバー紹介としての効果はある。

女声合唱のための唱歌メドレーは、寺院で歌われるのに雰囲気的にも合っており、美しい歌声が堂に満ちた。

ボブ・チルコットの「A Littele Jazz Mass」は、文字通りジャズ風のミサ曲である。想像通りノリの良い曲であった。

「A Littele Jazz Mass」は、高音が多用されるため、歌手達の喉を休めるために岸田典子がジャズ編曲による「里の秋」を弾く。岸田は、「秋ですので美味しいものを食べて肥えて」と冗談を言っていた。折角ダイエットに成功したのに、このところ美味しいものばかり食べていたせいで、また体重が増えてしまったらしい。

 

瀬戸内寂聴の作詞、千原英喜の作曲による女声合唱とピアノのための組曲「ある真夜中に」。“愛から悩みが生まれて”“この星に生まれて”“寂庵の祈り”“ある真夜中に”の4曲からなる。3曲目の“寂庵の祈り”は、以前にも「テラの音」で取り上げられたことがある。愛の業が全体を貫くキーとなっているようだ。

 

アンコールとして小田美貴作曲、信長貴富編曲の「群青」が歌われる。東日本大震災に被災した南相馬市立小高中学校の卒業生と、同校音楽教諭の小田美貴がそれぞれを思いを綴ることで作詞された作品である。卒業式のために作曲された作品ということもあって、学園ソング的な歌詞とメロディーで、奪われることになった南相馬での青春の思い出が歌われている。

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