これまでに観た映画より(141) 「天才たちの頭の中 世界を面白くする107のヒント」
2019年11月13日 京都シネマにて
京都シネマで、ドイツのドキュメンタリー映画「天才たちの頭の中」を観る。
邦題は「天才たちの頭の中」であるが、原題は「Why are you creative?」であり、大分ニュアンスは異なる。ドイツ人の映画監督であるハーマン・ヴァルケが、世界各国の有名人に「Why are you creative?(なぜあなたは創造的なのですか?)」と聞いて回った結果得られた証言によって構成された作品である。まず冒頭は、デヴィッド・ボウイ(2016年没)へのインタビュー映像が流れる。ボウイのミュージックビデオがなぜ独創的なのか? 歌詞からの発想なのか映像からの発想なのか?
証言者は計107名に及ぶ。日本からは、山本耀司(ヨウジヤマモト)、荒木経惟、北野武、またオノ・ヨーコも証言を行っている。
生まれつきクリエイティブだったと語る人もいれば、一昼夜で出来上がったものではなくずって練ってきたものと答える人もいる。「アンビルドの女王」といわれたザハ・ハディッド(新国立競技場の設計で物議を醸す。2016年没)などは後者である。ビョークのように「そうするしかなかった」と語る人も多い。映画監督のイザベル・コイシェのように創造的であることは不幸だと断言する人もいる。2度登場するマリーナ・アブラモヴィッチは母親のしつけの厳しさへの反発が創造性として発揮されるようになったと考えているようである。
荒木経惟の証言から、「性欲」と創造力の関連について語られる場面が続くが、北野武は明確にこれを否定、むしろ欲を抑えたところから創造力が生まれるとしている。
創造力と政治性についての話もある。政治家も数人登場する。ジョージ・H・W・ブッシュ(パパの方。2018年没)は余り質問の意図がよくわかっていないようだが(息子もそうだが父親のブッシュも歴代大統領の中でIQは最下位レベルとされる)、ネルソン・マンデラ(2013年没)のように新しい世界を築く上で創造力は不可欠とする人物もいる。
同じ答えをする人もいれば、相反する回答を行う人達もいて、答えはそう簡単に出そうにはない。クエンティン・タランティーノは、「Why are you creative?」と聞かれて、「いきなりハードな質問だね」と第一声を発し(再度のインタビューでは、「生まれつき備わっている資質、才能」「才能に見合う努力をしなきゃならない」と答えている)、作曲家・指揮者のピエール・ブーレーズ(2016年没)は「答えは出ないね」と断言している。
ダライ・ラマは、「生きているから」と生きていること自体が創造的という、らしい回答を行っている。
また、スティーヴン・ホーキング(2018年没)は、「創造的であるかないかは他者が決めることであって自身が決めることではない」と答えている。
ちなみに、ビル・ゲイツは質問に答えることなく通り過ぎた。
答えは人それぞれというありきたりな結果にもなっているのだが、それもまた当然である。答えが一つであったら、それこそ創造的では全くないからだ。
私自身が考えを述べると、創造性とは創造することではなく認識することだと捉えている。認識のない創造が本当の創造と呼べるかというと多分違うだろう。認識が優先される。読み取るものなのだ。
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