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2019年11月24日 (日)

これまでに観た映画より(143) ポーランド映画祭2019 in 京都 「ポランスキー短編集」

2019年11月20日 出町枡形商店街の出町座にて

出町枡形商店街の出町座で、ポーランド映画祭2019 in 京都 「ポランスキー短編集」を観る。ポーランドを代表する映画監督の一人、ロマン・ポランスキーがウッジ国立映画大学在学中に制作した無声短編映画の上映である。クレジットに制作年が書かれており、全て1950年代後半の作品であることがわかる。

「殺人」、「微笑」、「パーティーを破壊せよ」、「タンスと二人の男」、「灯り」という作品の上映。いずれもDVDで入手できる映像であるが、今回はポーランドの音楽デュオであるシャザの生演奏付きでの上映である。ヴァイオリンとクラリネット他による演奏。

 

「殺人」は、ベッドで寝ていた男性が、小型ナイフで胸を刺されて殺害されるという、それだけを撮影したショートムービーである。
若き日のポランスキーが何を考えて、これだけのムービーを撮ったのかはわからない。ただ特殊に見える小型ナイフで心臓を一突きにしていることや、犯人の見た目が温厚そうなおじさんであることから却ってプロの殺し屋らしく見える。これらは意識して撮っているのだろう。

 

「微笑」は、覗きを題材にしたコメディーである。志村けんが作りそうなギャグでもある。マンションの部屋の主がドアの前に牛乳瓶を並べるシーンがあるが、ポーランドは共産党支配時代は牛乳が配給制だったそうで、夜の間に家のドアの前に牛乳の瓶を出しておくと、朝には配給されているというシステムだったそうである。

 

「パーティーを破壊せよ」。ウッジ国立映画大学のあるウッジという街は、ポーランドの中でもフーリガン(通訳は「ヤンキー」と訳していた)が多いことで知られているそうで、ウッジ国立映画大学在学中のポランスキーは大学でパーティーを開催する時に、街のフーリガン達も誘うことにしていたそうだ。その流れでこの「パーティーを破壊せよ」もフーリガン達に出演して貰って撮ったそうだが、喧嘩の場面は実際に殴っているとしか思えない。そんなこんなでポランスキーも大学を退学になりそうになったことがあるそうだ。映画に登場するフーリガン達は、ジェームズ・ディーン風というか、「ウエスト・サイド・ストーリー」のジェッツ(ジェット団)風というか(ジェッツはポーランド系移民のストリートギャングである)ポーランドであっても当時の不良はアメカジだったことがわかる。

 

「タンスと二人の男」は、ポランスキーの初期作品の中でも傑作として知られている作品である。音楽はクシシュトフ・コメダが作曲しているが、今回はシャザの二人がコメダの音楽を元にアレンジした曲を演奏する。映画の一場面は、同志社大学寒梅館クローバーホールで観た「コメダ・コメダ」の中でも取り上げられていた。
タンスを担ぎながら海から上がってきた二人の男が街へと繰り出し、あらゆる場所で拒否されてまた海に戻っていくという話である。かなりシュールであるが、ヨーロッパということで異人や移民の話なども絡んでいるのかも知れない。ポランスキー自身がユダヤ系ということもある。タンスを担ぎながら歩く二人の横で、スリや殺人といった犯罪が起こり、二人は街で見掛けた可愛い女の子には相手にされず、女の子にちょっかいを出そうとした不良グループとは揉めて、殴り倒される。路面電車やホテルにはタンスを担いでいるが故に立ち入りを拒否される。
タンスが何のメタファーなのかは、特に考える必要はないのかも知れない。生活用具なので、生活や人生を担いでいると見るべきなのかも知れないが、そこは固定せずに個人で捉えた方がいいだろう。
個人的には、ボードレールの「人皆キメールを背負えり」という詩を連想した。

 

「灯り」。人形館が舞台である。人形職人の男が嬉々として人形を作り続けている。部屋には完成したものや作りかけの人形が一杯で、結構不気味である。だが、電気がショートして火事が起こり、人形達は炎に包まれる。大惨事である。
ここでカメラが切り替わり、人形館の外の風景が映る。雨の日で、人々は人形館から漏れ出ている灯りが火事によるものだということに気づかず淡々と通り過ぎていく。内と外の違いが、ある意味、現代の孤独と断絶と無関心を引き立たせているとも感じ取れる。

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