美術回廊(46) ジョーン・ジョナス京都賞受賞記念展覧会「Five Rooms For Kyoto:1972-2019」
2019年12月18日 御池通の京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAにて
御池通にある京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで、ジョーン・ジョナスの京都賞受賞記念展覧会「Five Rooms For Kyoto:1972-2019」を観る。
1936年生まれのジョーン・ジョナス。今月12日にロームシアター京都サウスホールでパフォーマンス「Reanimatio」が上演され、14日から京都市立芸術大学@KCUAのでの展覧会が行われている。年をまたいで来年の2月2日までの開催である。入場無料。
展覧会のタイトル通り、京都市立芸術大学@KCUAの5つの展示室を使って行われる展覧会。映像作品と美術の展示がある。
最初の部屋は、12日にロームシアター京都サウスホールで行われた「Reanimation」のものである。ジェイソン・モランの音楽も録音で流れてくる。
ジョナスは、歌舞伎や能を観て日本の表現形式に魅せられたそうだが、「Reanimation」では障子をスクリーンとして用いている。氷河の山脈の映像や、ドローイングの風景などが投影されている。
「Reanimation」の上演映像もモニターで流れている。セリフを書いた冊子が手前の椅子の上に置いており、自由に読むことが出来るようになっている。
2階に上がり、3つの部屋で行われる展示を眺める。最初の部屋に映されているのは、「Lines in the Sand」。パリスと結婚したとされるヘレネーの物語を題材としているが、ヘレネーはトロイアではなくエジプトに行ったとするアイスキュロスの戯曲を元にしており、エジプトに取材した作品である。ただ、ジョナスはエジプトには行かず、ピラミッドやスフィンクスの模倣品が街中にあるラスベガスに向かい、ラスベガスのそばの砂漠で砂にドローイングを行ったりしている。二重の意味で「本来ではない場所」での創造が行われるのである。
モニターには「ピロートーク」という題の、男女による語りの作品が映されていた。こちらは演劇性が高いものである。
2階の2つ目の部屋は、最も演劇性の高い実験映像である。「Organic Honey」と題された映像群で、最初期の作品である「Oranic Honey's Visual Telepathy」を始めとする6つの映像がスクリーンやモニターに流れている。何が映っているのかよくわからないものもある。
2階の3つ目の部屋は、ジョナスが取り組んでいる環境問題に題材を取った映像2つ(「Moving off the Land Ⅱ」と「Whale Video」)が流れている。人類と魚類の共通点が少年や少女によって語られ、「Reanimation」のラストに登場した魚は、やはり生物の原点という意味で扱われていたことがわかる。
ジョナスがスクリーンに映る海の生き物たちと一体になろうとしたり、自分の体に紙を押し当てて体型をなぞったものに吸盤を加えてタコと一体化したりと、生物の歴史を超えた融合を試みる場面が見られる。この作品でもジョナスがハンドベルを鳴らず場面があるが、自然破壊への「警鐘」そのものとして用いているようである。
階段を降りて、1階にある最後の展示室へ。この部屋ではジョナスの教育活動が紹介されている。4つのモニターが互いに背を向ける形で四方に並べられており、大学や美術アカデミーで行われたインプロビゼーション(即興)でのパフォーマンスが映し出されている。
ガラスケースの中には、ジョナスが授業の際に使用した指示書が展示されている。これも日本語訳テキストが壁に2冊ずつ下がっていて、手に取って読むことが出来る。詩や映像作品の組み立てを分析してパフォーマンスに生かすこともやっているようだが、日記を書いて、実際にあったことを表現するよう指示が出されたものもあった。
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