コンサートの記(618) 尾高忠明指揮大阪フィルハーモニー交響楽団「第9シンフォニーの夕べ」2019
2019年12月30日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて
午後7時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで大阪フィルハーモニー交響楽団「第9シンフォニーの夕べ」を聴く。指揮は今年も音楽監督の尾高忠明。
独唱は、森谷真理(ソプラノ)、清水華澄(アルト)、福井敬(テノール)、甲斐栄次郎(バリトン)。合唱は、大阪フィルハーモニー合唱団。
今日のコンサートマスターは、須山暢大。ドイツ式の現代配置での演奏である。
昨年の大フィルの年末の第九はフェスティバルホールの最前列下手寄りで聴いており、指揮者の尾高の姿はほとんど見えなかったが、今日も下手寄りの前から2列目。尾高の姿は微かに見え、第1ヴァイオリンに指示を送る時のにこやかな表情が印象的であった。
尾高らしい見通しの良い第九であり、京響を指揮したスダーンとは違って第九を独立峰と見たようなアポロ芸術的な演奏である。全てが中庸であり、傑出した個性がない代わりに抜群の安定感がある。1年を振り返る第九としてはある意味理想的かも知れない。
大フィルの技術は高く、朝比奈隆の時代から脈々と受け継がれてきたベートーヴェン演奏に対する誇りが感じられる。昨年、一昨年はホルンのミスが目立ったが、今年はそれもない。
第2楽章の音型や第4楽章のピッコロの浮かび上がりなどがあったことから、おそらくベーレンライター版での演奏であったと思われるが、古楽は一部を除いて意識されていないようである。
天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典での国歌独唱を務めた森谷真理。日本人ソプラノとしては硬質の声を持つ人だが、こうした声で聴く第九もいい。
演奏終了後には今年も福島章恭指揮大阪フィルハーモニー合唱団による「蛍の光」がある。溶暗の中、福島は緑の灯りのペンライトを振り、大フィル合唱団のメンバーも同色のペンライトを掲げたキャンドルサービスの中での合唱。今年あった様々な出来事が、清められた上で空へと昇っていくような趣があった。
| 固定リンク | 0
コメント