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2020年1月13日 (月)

美術回廊(47) 京都髙島屋7階グランドホール 「没後220年 京都の若冲とゆかりの寺―いのちの輝き―」

2020年1月8日 京都髙島屋7階グランドホールにて

京都髙島屋7階グランドホールで、「没後220年 京都の若冲とゆかりの寺―いのちの輝き―」という展覧会を観る。左京区岡崎にある細見美術館の若冲コレクションと京都府内にある寺院が所蔵する若冲作品を集めた展覧会。細見美術館のコレクションはこれまで数回に渡って観たことのあるものも含まれている。

近年、急速に再評価が進んでいる伊藤若冲(1716-1800)。京都錦小路の青物問屋に生まれ、23歳から実家の商いを継ぐも、40歳で弟に店を譲り、隠居の身として絵に打ち込んでいる(最近になってその後も町衆のために働いていたことも確認された)。鶏の絵を多く残していることでも有名だ。

伊藤若冲の弟子についてはこれまでほとんど知られていたかったが、頭に「若」を付ける系譜と、下の漢字に「冲」を当てるもう一種類の系譜があることが分かってきたという。今回の展覧会では、若冲の弟子の作品も展示される。


まず最初に展示されているのは、若冲の木版画である。描写よりも意匠が重視される作品であるが、その後、竹久夢二を経て和田誠にまで至るデザイン性をそこに見いだすことは容易である。というよりも当たり前でもある。絵画というよりもデザイン画の伝統は江戸時代からすでに始まっており、後世の者が先人の絵に学ぶのは当然だからである。良くも悪くも現代人は江戸時代の影響を受け続けているといわれるが、こうした一見、関連がなさそうなところにもそれが見出せるのが面白くもある。

細見美術館のコレクションからは、「雪中雄鶏図」、「糸瓜郡虫図」、「伏見人形図」などお馴染みの作品が並ぶ。「伏見人形図」などもデザイン画の先祖の系譜に入りそうな作品である。そのほかにも、禅の祖を描いた「朱達磨図」、軍神「関羽図」、一瞬を描いた「虻に双鶏図」、簡略の美が光る「群鶏図」、今年の干支で、私も年賀状に採用した「鼠婚礼図」などが展示されている。

寺院所蔵の絵画としては、慈照寺(銀閣寺)所蔵の「牡丹百合図」、「鯉図」、鹿苑寺(金閣寺)所蔵の「竹虎(ちっこ)図」、「玉熨斗図」、「亀図」、伊藤若冲の菩提寺である裏寺町の宝蔵寺所蔵の「髑髏図」、相国寺(慈照寺、鹿苑寺の本山)の「鱏(えい)図」、「鳳凰図」などが展示されている。「鱏図」が面白い。

伊藤若冲が壬生寺に奉納した狂言の面も展示されている。これは今でも壬生狂言で使われているそうである。

あっかんべーをしたユーモラスな「布袋図」や、千葉県の魚でもある鯛を描いた「鯛図」なども面白い。「鯛図」は釣り上げられた瞬間の鯛を描いたものだが、鯛が躍り上がっていることがわかり、躍動感が感じられる。釣り針と鯛を描いた絵であるが、「留守絵」と呼ばれるもので、主人公である恵比寿を敢えて描かない手法で描かれたものだという。

相国寺の「釈迦三尊像(釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩)」は色鮮やかだが、複製である。複製ではあるが、緻密な筆致を知ることが出来る。

屏風に描かれた鶏は実に生き生きしている。弟子である若演が描いた鶏の絵もあるが、生命力が違う。若冲が描いた鶏は今にも動き出しそうな生命力が宿っているが、若演が描いた鶏はやはり単純に描かれたものという印象を受ける。構図の問題も大きいが、細部の描き方も大きいと思われる。ある意味捻れたポージングが躍動感を生んでいるともいえる。

最後にMBS(毎日放送)が制作した上映時間約10分の若冲紹介映像が流れており、若冲と仏教、とりわけ伊藤家の宗派である浄土宗と若冲が障壁画や仏画を手がけた臨済宗相国寺派、若冲が晩年に関係を持つことになった黄檗宗との関わりなどが描かれていた。

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