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2020年1月17日 (金)

観劇感想精選(337) いるかHotel vol.21 「破稿 銀河鉄道の夜」Aキャスト公演

2020年1月16日 新開地の神戸アートビレッジセンターKAVCホールにて観劇

午後7時30分から、新開地にある神戸アートビレッジセンター(KAVC)KAVCホールで、いるかHotelの公演「破(やぶれ)稿 銀河鉄道の夜」を観る。元々は兵庫県立神戸高校演劇部によるオリジナル作品として、1996年10月にKAVCホールで初演されたものである。作:水野陽子、脚本・演出:谷省吾。出演はオーディションで選ばれたABCのトリプルキャストで、1月16日午後7時半の回はAキャスト、仲村綾美、山﨑永莉(眞珠座。)、うめいまほ(VOGA)の3人が登場する。上演協力にはMONOの土田英生と渡辺源四郎商店の畑澤聖悟が名を連ねている。

開演前には、舞台となっている1996年のヒット曲が流れている。globeの「DEPARTURES」、SMAPの「青いイナズマ」、玉置浩二の「田園」、ジュディマリの「そばかす」、PUFFYの「これが私の生きる道」などである。

まず、いるかHotelの谷省吾が学ラン姿で登場して前説を行う。いるかHotelという劇団自体が、「破稿 銀河鉄道の夜」を上演するために旗揚げされたもので、谷が「破稿 銀河鉄道の夜」というタイトルの名付け親であることも明かされる。

舞台は、1996年10月、神戸市内にある高校の演劇部部室である(校名が出てくることはないが、地獄坂という通称の地名が出てくることから神戸高校であることがわかる)。

高校3年生のカナエ(山﨑永莉)は、すでに演劇部を卒業しているが、今日も部室にやって来て、発声や井上ひさしの「イーハトーボの劇列車」の冒頭を読みながら滑舌の練習をしたりしている。センター試験が迫っているのだが、カナエは受験勉強に真剣に取り組めていない。同じく元演劇部のサキ(うめいまほ)はそんなカナエを心配しており、英語の単語帳を渡して取り組むよう促したりする。サキには彼氏がいるのだが、詳しいことはカナエにも明かしていない。ただ、バレバレではある。かつて共に北村想の「想稿 銀河鉄道の夜」を演じたトウコ(仲村綾美)も姿を見せて、演劇談義に花が咲く。この高校の演劇部では毎回、上演した作品の台本を破り捨てることが伝統となっているが、カナエは「想稿 銀河鉄道の夜」の台本だけは破り捨てることが出来ずにいた。

 

演劇部あるあると、1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災による喪失感とその超克を絡めた作品であり、高校演劇ではヒット作となっていて、今でも毎月、日本のどこかの高校が上演を行っているような作品だそうだが、初演が行われたKAVCホールで阪神淡路大震災25周年を記念して行われた上演いうことで、独特のリアリティと臨場感が感じられる出来となっている。

1996年、大河ドラマは竹中直人主演の「秀吉」。青春ドラマの金字塔である「白線流し」が放送されたのもこの年で、「破稿 銀河鉄道の夜」も少しだけこのドラマの影響を受けているかも知れない。同じフジテレビ系では浅野温子主演で玉置浩二や西村まさ彦(当時は西村雅彦)、鈴木杏樹らが出演した「COACH」もヒットしており(この「COACH」の主題歌が「田園」であった)、演劇界では今では休刊(事実上の廃刊)になってしまったが季刊「せりふの時代」が発売されたのもこの年である。私も創刊号から毎号購入して読んでいた。

前年に阪神・淡路大震災とオウム真理教事件が発生し、日本の転機となった時代である。

平成時代の日本は、阪神・淡路大震災と東日本大震災という二つの大震災を経験したわけだが、私は、いずれの大震災でも揺れすら感じない場所にいたため、第三者でしかありえない立場にいる。本当の意味でのリアリティを感じるのは極めて難しいわけだが、こうした舞台を観ることで、疑似体験を得ることは貴重であることは間違いない。劇中では、つかこうへいの「幕末純情伝」や北村想の「想稿 銀河鉄道の夜」の場面が演じられたり、演劇集団キャラメルボックスの「広くてすてきな宇宙じゃないか」の話が出てきたり(成井豊は最近、実家のガラス店を継いだそうだが)、野田秀樹と大竹しのぶの話題になるなど、1990年代の高校演劇の空気がビビッドに伝わってくるのも魅力的である。

災害の記憶を風化させないために、また若い人達には歴史的出来事という認識になっている阪神・淡路大震災の被災者当事者の証言として観て欲しい作品である。

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