コンサートの記(623) 京都府-レニングラード州友好提携25周年記念事業 日露地域・姉妹都市交流年認定イベント ロシア民族楽器楽団「メテリッツア」友好提携25周年記念コンサート「レニングラードの夕べ」
2020年1月24日 京都府立府民ホールアルティにて
午後7時から、御所の西にある京都府立府民ホールアルティで、京都府-レニングラード州友好提携25周年記念事業 日露地域・姉妹都市交流年認定イベント ロシア民族楽器楽団「メテリッツア」友好提携25周年記念コンサート「レニングラードの夕べ」を聴く。無料、事前申し込み不要である。そのためか、開場の15分前にアルティに着いたのであるが、すでに長蛇の列が出来上がっていた。結局、列がロビーの中に収まらないということもあって、開場は6時30分から20分に繰り上がった。
京都府はレニングラード州と平成6年(1994)11月4日に友好提携を締結している。レニングラード州の州都はレニングラードからサンクトペテルブルクに名前が変わって久しいが、州の名前は現在に至るまで変更はない。ちなみに共に古都である京都市とサンクトペテルブルク市であるが姉妹都市ではない。「北方のベネチア」とも呼ばれるサンクトペテルブルク市と姉妹都市なのは「水の都」大阪市である。
ロシア民族楽器楽団「メテリッツア」は、1988年にイーゴリ・トニンがサンクトペテルブルクで結成した楽団。現在もイーゴリ・トニンが率いている。イーゴリ・トニンはレニングラード州立リムスキー=コルサコフ音楽学校の出身であり、「メテリッツア」も同校の卒業生や若手教員で構成されている。
曲目は、第1部が、「ペドラーズ」、「コチョウザメ」(ロシアの婚礼式典曲。歌:エレナ・クスカヤ)、ツィガンコフの「ツーステップ」(ドムラ独奏:レイラ・アフメドヴァ)、クリコフ作曲の「古い菩提樹」(ロシア民族曲をテーマにした幻想曲)、テムノフの「モスクワ カドリール」(歌:エレナ・クスカヤ)、アファナシエフの「碧い湖を見つめて」(歌:エレナ・クスカヤ)、「私は蚊と踊る」(ロシア民謡道化歌。歌:エレナ・クスカヤ)、ロシア民謡「カリンカ」(ゴロドフスカヤ編曲。バラライカ独奏:アンドレイ・カシャノフ)、シャハノフの「3つの民話をテーマにした幻想曲」(グスリ独奏:エレナ・ヴェサロヴァ)、ジェリンスキーの「ジャズ・ピッチカート」、グリディンの「ラシプーハ」(クロマティックアコーディオン:アンドレイ・クズミノフ&ミハイル・シュスタロフ)、「私は丘に登ったの」(歌:エレナ・クスカヤ)。第2部が、ルロイ・アンダーソンの「そりすべり」、ダウトフの「ファティマ」(ドムラ独奏:レイラ・アフメドヴァ)、フィンランド・カレリア地方の民謡(クロマティックアコーディオン:アンドレイ・クズミノフ&ミハイル・シュスタロフ)、「ワーレンキ」(ロシア民謡変奏曲)、日本民謡「桜(さくらさくら)」(ソプラノ:天野加代子)、ヴァカレイニコフの「スレイベル(小鈴)」(ソプラノ:天野加代子)、シャハノフの「グスリと管楽団の演奏会パート2」(グスリ独奏:エレナ・ヴェサロヴァ)、グレボフの「ユーモレスク」(バラライカ独奏:セルゲイ・クラスノクツキー)、「ほら、郵便トロイカが駆けてくる」(ロシア民謡「トロイカ」。歌:エレナ・クスカヤ)、「牧草のアヒル」(ロシア民謡。歌:エレナ・クスカヤ)。
背後のスクリーンに映像を投影しながらの演奏である。マイクとスピーカを使用。
使われている民族楽器は、ドムラ、バラライカ、グスリの3種類。ドムラは胴体が丸い、ロシアの民族楽器の代表格であるバラライカは三角形の胴体を持つ弦楽器である。グスリは平面に弦が張られているが、平行ではなく翼型のボディに合わせて放射状に広がっている。ドラムは全員女性奏者、バラライカは全員男性が演奏を受け持つが、性別によって担当する楽器が違うというわけではおそらくないだろう。
その他の楽器として、ドラムス&パーカッション、クロマティックアコーディオン、キーボードが加わる。
イーゴリ・トニンは、ビートルズも来ていたような服装で登場。全曲で指揮を受け持つ。
歌を担当するエレナ・クスカヤは伸びやかで澄んだ歌声の持ち主で、ノリも良い。
「私は蚊と踊る」では、演奏前に蚊の羽音がスピーカーから聞こえ、民族楽器がリムスキー=コルサコフの「熊ん蜂の飛行」を前奏として演奏するなど、編曲も凝っている。
バラライカの独奏もあるが、速弾きによる超絶技巧であり、ロシア民謡の背後で物憂げに鳴っているというバラライカのイメージが覆る。
第2部冒頭の、ルロイ・アンダーソンの「そりすべり」では、アゴーギクを多用し、クラシックの演奏との違いを打ち出す。
天野加代子にソプラノによる「桜」では、ロシアの楽器らしいもの悲しい音色が曲調に合う。これは、エレナ・クスカヤに歌による「ほら、郵便トロイカが駆けてくる」においても同様である。日本でもよく知られている「トロイカ」であるが、本来の歌詞に内容は、日本語詞とは大きく異なるものである。
アンコールは3曲。全てエレン・クスカヤと天野加代子による歌唱入りである。1曲目は、イーゴリ・トニンが「一緒に歌ってください」と言うも全然知らない曲である。2曲目は「モスクワ郊外の夕べ」。演奏終了後、天野加代子が、「実はこの歌は元々は『レニングラードの夕べ』というタイトルだったが、映画で用いられて以降、『モスクワ郊外の夕べ』というタイトルに変わった」という話をする。
最後はお馴染みのロシア民謡「カチューシャ」。エレナ・クスカヤがロシア語で歌い(「輪になって来い」と聞こえる部分が存在する)、天野加代子が、「林檎の花ほころび」で始まる日本語詞を歌う。有名曲ということで、客席も大いに盛り上がった。
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