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2020年2月 1日 (土)

コンサートの記(622) 広上淳一指揮 第15回京都市ジュニアオーケストラコンサート

2020年1月26日 京都コンサートホール

午後2時から、京都コンサートホールで、第15回京都市ジュニアオーケストラのコンサートを聴く。指揮は京都市ジュニアオーケストラ・スーパーヴァイザーで、今年は大河ドラマ「麒麟がくる」オープニングテーマの指揮者でもある広上淳一。

京都市交響楽団第12代常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーを経て、第13代常任指揮者兼音楽顧問になるという、裏技的継続作を使った広上淳一。ただ、このところは広上登場の定期演奏会は風邪で行けなかったと、接する回数は多くない。昨秋も名古屋にスウェーデン放送合唱団と京響の共演する広上指揮の演奏会を聴きに行く予定があったが、前日がフェニーチェ堺でのパーヴォ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の来日演奏会で疲労困憊となったため、名古屋行きは自重した。曲目がフォーレとモーツァルトの「レクイエム」というのも体調が悪い時には縁起が悪い。
ということで、今年は広上指揮の京都市ジュニアオーケストラのコンサートに出掛けてみた。毎年聴きに行っているわけではないが、初期に京都市ジュニアオーケストラのコンサートミストレスを務めていた石上真由子が、「医師免許を持つヴァイオリニスト」として大ブレークしており、未来の才能に接する貴重な機会ともなっている。

曲目は、ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」、リストの交響詩「前奏曲」、ブラームスの交響曲第1番。

ベートーヴェンイヤーとなる2020年であるが、ベートーヴェン作品は意図的にかどうかはわからないが避けられている。そもそも日本は年末の第九公演が定着しているなど、ベートーヴェン作品が演奏される機会が極めて多い国であり、ベートーヴェンイヤーだからといってベートーヴェン作品を特別に取り上げなくても例年通りなら普通に聴く機会に恵まれるはずで、特集すると逆に飽和状態になるという懸念もある。

 

開演前と休憩時間にロビーコンサートがあり、多くの人が詰めかける。演奏指導を行っているということで、京都市交響楽団の楽団員の顔もそこここで見かける。

ロビーコンサートの演奏は、開演前が、シュターミッツの2つのヴィオラのための6つの二重奏曲より第1楽章と第2楽章、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第9番より第4楽章、福田洋介の「さくらのうた~FIVE」。休憩中が、ラヴェルの弦楽四重奏曲より第2楽章である。
みな若いので、音楽が自分のものになっていない感じだが、二十歳前後できちんと表現出来たらそれこそ半世紀に一人レベルの天才であり、ちゃんと演奏出来ているだけでも大したものである。

 

前半は、安藤光平がコンサートマスターを務める。京都市立芸術大学音楽学部・大学院音楽研究科の演奏会では、ヴァイオリンは男子が一人だけという状態であったが、京都市ジュニアオーケストラはヴァイオリンの男子も比較的多い。3曲ともティンパニは女性であり、これはプロオーケストラでは余り見られないことである(打楽器全体で見ても7人中6人が女性である)。ホルンはプロでも女性奏者の活躍が目立っているが、京都市ジュニアオーケストラでも前半はホルンが4人中3人が女性、後半は全員が女性となる。巨大なコントラバスは男性奏者の多い楽器だが、京都市ジュニアオーケストラの場合は8人中7人が女性であり、楽器の選び方の基準が変わってきているのかも知れない。

 

ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」。景気づけ的に演奏されることの多い曲だが、広上は遅めのテンポを取り、高揚感よりもフォルムの美しさと確実な合奏力を聴かせることを選ぶ。教育的要素も多いので、いたずらな客受けの良さを避けたと考えることも出来るだろう。
京都市ジュニアオーケストラも広上の要求に応えて、美しい合奏を聴かせる。

 

リストの交響詩「前奏曲」。そういえばこの曲もテレビCMで使われたことがある。タバコのCMだったので、規制の入る1996年以前のことであろう。タバコのCMとしてはドビュッシーの「海」が使われていたこともあり、大人の嗜好品ということで、クラシックの曲が選ばれたりもしたのであろうか。
合奏がしっかりしている割に散らかった印象を受けるのは、奏者それぞれの音楽性がバラバラだからかも知れない。若者だからというよりも、常設の団体ではないということの方が大きいだろう。だがそれでも合奏そのものの能力と威力には秀でたものがあり、しっかりとした演奏が時を刻んでいく。ジュニアオーケストラだと弦の薄さや管のソロの弱さが感じられる場合もあるのだが、今年はそれもなく、かなり上質の仕上がりとなった。弦も管も輝かしい。

 

後半、ブラームスの交響曲第1番。コンサートミストレスは木田奏帆に代わる。名前から察するに親も音楽好きなのだと思われる。

威力で押す演奏も珍しくないブラームスの交響曲第1番であるが、広上と京都市ジュニアオーケストラは冒頭から音圧よりもブラームスの憂愁を引き立たせた演奏を行う。弦はウエットであり、押しつけがましさがない。主部に入っても滴るような音色で、ブラームスの悲哀を紡ぎ続ける。
第2楽章でも寂しさが際立っており、単なる美しさでなく生の悲しみを根底に置いた音楽を流す。木田奏帆のヴァイオリンソロも美しい。

最終楽章での歓喜の主題も最初のうちは朗々といった感じでは必ずしもなく、「取り敢えず」の明るさを示した後で逡巡は続く。二度目の歓喜の主題で広上は低音をしっかりと築いた上で全楽器を鳴らし、ようやくブラームス自身の確信を描き出す。そしてラストの金管のコラールでそれはようやく決定的なものとなる。
最初から好戦的で音で勝負するタイプのブラ1もかつてはよく見られたが、今は広上のように、ブラームスの懊悩に寄り添うような演奏が増えた。研究が進んだということもあるが、指揮者の独断で突き進むような時代ではなくなったということでもある。

 

演奏終了後、広上は3度ほどステージに呼ばれたが、最後はマイクを片手に登場。「このようなことを言うことのは余りないのですが(中略)京都市ジュニアオーケストラは、日本で一番上手いジュニアオーケストラです」と讃える。

そして、合唱指導を行った喜古恵理香、鈴木衛(まもる)、そして京都市ジュニアオーケストラ出身で、東京音楽大学指揮科3年の「リク君」が呼ばれる。

広上は3人に、京都市ジュニアオーケストラの印象を聞く。喜古恵理香は、「最初は広上先生あっての京都市ジュニアオーケストラという感じだったのが、今では広上先生と若き音楽家の集まり」と語り、広上から「喋り上手くなったね。今は指揮者も喋れないといけないから。これからもどんどん人を騙して下さい」と励まされる(?)。
鈴木衛は、「衛=守る=セコム」ということでセコム先生と呼ばれているという話を広上がして、鈴木も「どうもセコムです」と挨拶を行う。「京都市ジュニアオーケストラは、皆さんお聞きになって分かる通り、大変温かい音がする。また合奏というのは、目で合わせたり、耳で合わせたりもするけど、温かい心で合わせる。そういう二つの意味での温かさ」について述べた。
本名はわからないがリク君は、今日のことを川柳に詠んだそうで、「KJO優れた合奏金メダル」と発表するが、広上に「KJOって何?」と聞かれ、「Kyoto Junior Orchestra」と答えるも、「そういうのちゃんと説明しなきゃ」と突っ込まれる。説明しないとわからない時点で川柳としてはまずいわけだが、そもそもがそのままのことしか言っておらず、川柳にする必要もない。ちなみに作るのに2、3時間掛かったそうで、本番を聴いて詠んだものではないことがわかる。

 

最後は、リク君、鈴木衛、喜古恵理香の指揮リレーによりブラームスのハンガリー舞曲第1番が演奏される。この曲はブラームス本人がオーケストレーションを行っている。

まずリク君の指揮でスタート。きっちり纏まってはいるが民族音楽なのでももっと揺れを出して欲しいところである。トリオの部分は鈴木衛が指揮するが細部がやや粗め、再現部を指揮した喜古恵理香はスイングは上手く出していたが、次第に単調に陥るということで、必ずしも良い演奏ではなかったが、まだ若い指揮者と京都市ジュニアオーケストラによるフレッシュな音楽との出会いの場となっていた。

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