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2020年4月29日 (水)

これまでに観た映画より(168) 黒澤明監督作品「羅生門」

※この記事は2005年11月11日に書かれたものを加筆修正したものです

DVDで映画「羅生門」を観る。言わずと知れた黒澤明監督作品。1951年度ヴェネチア映画祭金獅子賞受賞作品。
前に「羅生門」を観たのはまだ10代だった時だから10数年ぶりの鑑賞になる。

芥川龍之介の小説を原作としているが、原作になったのは「羅生門」ではなく、「藪の中」である。
光と影が織りなす妙なる映像が何ともセクシーである。映像美だけでも賞賛に値する。

人間のエゴ、醜さをあぶり出した作品。しかし、これが1950年に公開されたということを考えると、戦後の闇市の記憶がまだ生々しく、時代の背後で一般民衆を巻き込んだどす黒いものが淀んでいた時期であり、当時の観客は今よりもずっと生々しいものをこの画に見ていたであろうことが想像される。

三船敏郎が藪の中を駆け抜けるシーンは中央に置かれたカメラの周りをグルグル回ることで撮られたものだという。だから安心して思い切り駆け抜けることが出来た上に、広い場所も必要ではなかった。黒澤の職人芸が感じられる。

京マチ子は、10代で初めて見たときには、少しも美人に感じられなかったのだが、今見ると、妖しい雰囲気を出していてなかなかである。

「藪の中」を原作にしたのに何故タイトルを「羅生門」にしたのか? 事実はわかっていないようだが、人間の醜悪さを描いた「藪の中」を描きながらも、その醜悪な都や時代(戦後すぐの東京)を抜け出す希望に比重が置かれているからではないか、と考える。羅生門は希望への出口なのだ。

ボロボロに崩れた羅生門から赤子を抱いて、未来へと歩き出す男(志村喬)の表情がそれを裏付けているように思える。

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