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2020年4月 4日 (土)

オーケストラよ、歴史を生かせ

 例えば、私が京都に来たのは2002年だから、朝比奈隆(1908ー2001)時代の大阪フィルハーモニー交響楽団の公演パンフレットなどは持っていないし、手にしたことさえない。 
 基本的にパンフレットは無料だが、数年分を纏めて冊子にしたら売るだけの価値は出る。どれだけ売れるかは疑問であるだが、少なくとも私は買う。損失額を考えれば収益など微々たるもので焼け石に水かも知れないが、何もせずに寄付だけを頼みにするよりは幾分ましだろう。 
 パンフレットに載せられた文章や写真は、学術的、史料的に価値があるはずだし、その時代の空気が反映された貴重な証言ともなっているはずである。載せられた文章は全て権利をクリアしたものであるし、なんらかの問題があったとしても、この状況において転載や再利用に「NO」という執筆者や権利者がいるとも思えない。一から本を作るには時間と経費が掛かるが、編集だけならすぐに、とまでは言えないが、かなり早く出せる。紙媒体でなく、PDFの有料ダウンロードでもいい。電子書籍でも出せるだろう。パンフレットだけではない。積み上げてきた歴史の中に価値のあるものは必ず眠っているはずである。
 
「音楽団体だから音楽でしか勝負出来ない」というのは正しいが、これまで歩んできた歴史には、それが固有のものだけに価値があり、売りになる。音楽は音楽だけに価値があるのではなく、その背後にある若しくはそれに関わった多くの人々の物語と記録の精華でもあるのだ。

 日本のクラシック音楽愛好者層はとにかく薄く、成功する可能性は低いかも知れないが、意地は見せて欲しい。

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