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2020年4月 1日 (水)

これまでに観た映画より(164) 「のぼうの城」

録画したまま長く未見であった映画「のぼうの城」を観る。原作・脚本:和田竜、監督:犬童一心&樋口真嗣。出演:野村萬斎、榮倉奈々、佐藤浩市、成宮寛貴、山口智充、上地雄輔、山田孝之、平岳大、前田吟、中尾明慶、尾野真千子、芦田愛菜、ピエール瀧、和田聰宏、西村雅彦、中原丈雄、鈴木保奈美、平泉成、夏八木勲、市村正親ほか。TBS開局60周年記念作品として制作された作品であり、安住紳一郎がナレーターを務めている。もとは2011年に公開予定であったが、忍城に迫る激流が東日本大震災での津波を連想させるとして、公開が1年ほど延びている。

関白・豊臣秀吉の小田原征伐に伴う忍城の戦いを描いた作品である。

まずは、天正10年(1582)、後に秀吉の中国大返しの発端となったことで知られる毛利征伐、備中高松城の戦いの描写から入る。羽柴秀吉(市村正親)は備中高松城を土塁で囲い、河川の水をその中に注ぎ込んで城を孤立させるという、水攻めを行った。城攻めの名手、秀吉の最も効果的な戦略として知られる(だが、その戦略のために落城まで時間が掛かり、このことが本能寺の変が起きる伏線ともなった)水攻めに、佐吉と呼ばれていた頃の石田三成(上地雄輔)は感動。いつかこの戦法を用いてみたいと心に誓う。

それから8年が経ち、豊臣の氏を賜った秀吉は、反抗する唯一の大名である小田原北条氏を攻めることを決意。石田三成には、北条方の城である館林城と忍城を落とすよう命じる。三成は官僚としては有能で頭も良いが、これといった戦績がなく、人望も上がらないでいた。秀吉には三成に功を上げさせようという目論見もあった。
三成は、盟友である大谷吉継(山田孝之)や、余り反りは合わないが後に共に五奉行に名を連ねることになる長束正家(平岳大)らを引き連れてまずは館林に向かうが、館林城は豊臣方の大軍に怖れをなして戦わずして開城。余りの呆気なさと相手の胆力のなさに失望した三成は、次の目標である忍へと向かう。

忍城の城主は成田氏長(西村雅彦)であったが、氏長は北条の本城である小田原城に向かう必要があったため、叔父の成田泰季(やすすえ。平泉成)に城代を任せる。実は氏長は秀吉側と通じるつもりであり、忍籠城は見せかけにせよと家臣らに命じた。

石田軍が忍城を包囲する中、泰季は病に倒れ、長男の成田長親(野村萬斎)に城代を譲る。長親は、「うつけ」と評判であったが、人に愛される質であり、「でぐのぼう」に由来する「のぼう様」として領民に好かれていた。
長親も降伏・開城に異論はなかったが、ここで三成が策を用いる。長束正家の性格を見抜いた上で軍使に命じ、忍城に送り込む。上の者には下手に、下の者には居丈高に出る正家は成田氏を見下す発言を続け、結果として長親らの反発を招く。長親は開城を翻して開戦を決意。正木丹波(佐藤浩市)、酒巻靭負(さかまき・ゆきえ。成宮寛貴)、柴崎和泉守(山口智充)らも長親を支持し、ここに忍城の戦いの幕が切って落とされた。


人たらしであるが武将としてはいささか頼りない長親と、知略に優れるが人望がなく、これといった戦績がないため侮られている三成は、一見すると対極のようでありながら実は表裏一体の関係であり、共に人の心を読むことに長けている。あるいは立場が違ったなら互いを補い合う形で良き友、良き同僚ともなり得た間柄のように思われる。負け戦であることを大声で認める三成の清々しい表情がそれを表しているようでもある。
戦国武将の友情を描いた作品ではないが、すれ違う中で一瞬、わかり合えた関係である二人が愛おしく見えたりもする。

パブリックイメージでいうと三成に近い野村萬斎が成田長親を、長親らしい要素のある上地雄輔が石田三成を演じるという逆転の配役も妙味がある。

エンドクレジットでは忍城のあった埼玉県行田市の映像が流れ、今も残る忍城の戦いの名残が紹介されている。

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