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2020年4月19日 (日)

コンサートの記(635) 高関健指揮京都市交響楽団第588回定期演奏会

2015年3月29日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から京都コンサートホールで京都市交響楽団の第588回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は京都市交響楽団常任首席客演指揮者の高関健。

プログラムは、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(ヴァイオリン独奏:滝千春)、ショスタコーヴィチの交響曲第8番。

開演20分前から高関によるプレトークがある。高関はモーツァルトのヴァイオリンのための作品がザルツブルク時代に集中しているのは、モーツァルトがザルツブルクの宮廷楽団でコンサートマスターとして活躍するなど、ヴァイオリンに接する機会が多かったためだと説明する。モーツァルトはその後、ザルツブルクのコロラド大司教と喧嘩してウィーンに飛び出すのだが、ウィーンでは主に自分で演奏するためのピアノ協奏曲やピアノ・ソナタなどを作曲したため、ヴァイオリン協奏曲などが書かれることはなくなったのだろうと推理する。

ショスタコーヴィチの交響曲第8番については、交響曲第7番「レニングラード」と対になる曲として知られるし、「レニングラード」が凱歌(とされるが本当の意図は不明)であるのに比べて陰鬱な曲調であると紹介し、交響曲第5番に似ていることに気付かれるとも思うと述べる。第1楽章ではかなり長く美しいイングリッシュホルンのソロがあるということにも触れる。

今日の京都市交響楽団のコンサートマスターは渡邊穣。フォアシュピーラーは泉原隆志。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」の編成にはフルートもクラリネットも登場しないが、オーボエトップの位置に座ったのは首席奏者である高山郁子ではなくフロラン・シャレールであった。高山郁子はショスタコーヴィチのみの参加。フルート首席の清水信貴、クラリネット首席の小谷口直子もショスタコーヴィチのみに加わる。

今日は古典配置での演奏。ヴァイオリン両翼で、コントラバスは最後部に横一列に並ぶ。


モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」。ヴァイオリン独奏の滝千春は、2001年にノヴォシビルスク国際ヴァイオリンコンクール・ジュニア部門で優勝、2002年にメニューイン国際ヴァイオリンコンクール・ジュニア部門第1位、2006年にオイストラフ国際ヴァイオリンコンクール第3位などの経歴を持つ若手ヴァイオリニスト。桐朋女子高校音楽科、チューリッヒ音楽大学を経て、現在はベルリンのハンス・アイスラー芸術大学在学中である。

滝のヴァイオリンであるが、独特の甘美な音色を持ち味とし、今の季節や彼女の名前とは関係がないが春風のように爽やかなヴァイオリンを奏でる。

高関はこの曲はノンタクトで指揮。きっちりとした指揮であるが、彩り豊かでノリの良い演奏を京響から弾き出す。なお、モーツァルトの時代には弦楽5部の曲であっても、当時の弦楽器は今ほど大きな音が出なかったことから、楽譜には記されていなくてもファゴットで低音を形作るのが通例、というよりファゴットが加わるのが当たり前だったためファゴットのパートが書かれなかったという解釈に基づき、ファゴットを加えての伴奏となった。


ショスタコーヴィチの交響曲第8番。演奏される機会の比較的少ない曲だが、京響は数年前に沼尻竜典の指揮で演奏している。

第1楽章から、弦楽の透明感に驚かされる。透明なだけでなくボリュームもある。京響の弦楽は絶好調であり、管もそれに負けていない。

第3楽章の疾走感のある阿鼻叫喚の世界から沈鬱な葬送行進曲(第4楽章)、諧謔的な旋律が登場し、爆発を経て、交響曲第7番「レニングラード」第1楽章のおどけた旋律を連想させる音の進行で静かに終わる第5楽章。この3つの楽章は連続して演奏されるのだが、高関と京響はショスタコーヴィチがこの曲に込めたメッセージを詳らかにしていく。

高関は第4楽章のみノンタクトで振ったが、ソヴィエト共産党によって粛正された人々へのレクイエムのような哀切なメロディーを切々と歌い上げていた。

第5楽章の爆発力も凄まじく、その後もスターリン独裁下で粛正された人々への鎮魂と祈りのような旋律が続き、曲は静かに閉じられる。
ちなみにこの曲は1943年に初演されており、スターリンはまだ存命中である。交響曲第8番は一応は赤軍の闘争と勝利を描いたものだと作曲者は述べているが、スターリン圧制下で率直な発言をしたとは考えられない。以前は交響曲第7番のタイトルである「レニングラード」(ただし忠実にはレニングラード攻防戦を描いたからではなくレニングラード市に献呈されたためにこの名がある)に対して交響曲第8番は「スターリングラード」というタイトルで呼ばれたこともあった。だた、今はこの曲を「スターリングラード」と呼ぶ人はほとんどいない。

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