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2020年4月30日 (木)

これまでに観た映画より(169) 北野武監督作品「Dolls」

※この記事は2004年8月19日に書かれたものです

北野武監督「Dolls」を観る。出演:菅野美穂、西島秀俊、深田恭子、岸本加世子、大杉漣、松原智恵子、三橋達也ほか。音楽:久石譲。

通俗的なエピソードが続くが、これは意図されたものだと思う。恋人に裏切られて自殺を図った女、事故に遭った好きなアイドル歌手の傷ついた姿を見ないために自らの視力を奪う青年(「春琴抄」そのものだ)、別れた恋人のために何年も何年も年老いても弁当を作って公園で待ち続ける女性とそれを見つけたかっての恋人の再会。紅葉が血のイメージに重なる。どれも紋切り型(ステロタイプ、クリシエ)である。だがそのありふれた過程から静かな狂気が浮かび上がる。彼らは全員優しい狂人だ。そしてその優しさがある上に弱く悲しい存在だ。むしろ現実の文法に沿って生きているまとも(とされる)な人々の方が狂的に見えてくる。

この映画のモチーフは「北野武といえば」の枕をつけて思い起こされるあの事故だ。あからさまにそれは示されている。あの事故があったからこその映画と言うことも出来るだろう。

心に染みる佳篇である。

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