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2020年5月14日 (木)

YouTube配信「ホンマこんなときやけどやっぱ(音楽)好きやねんTV WINTER END PARTY 2020」(文字のみ)2020.3.1

2020年3月1日

新型コロナウィルスの蔓延防止のために日本全国でコンサートキャンセルラッシュが起こっているが、KAJIMOTO所属のアーティストが、午後5時からYouTubeで「ホンマこんなときやけどやっぱ(音楽)好きやねんTV WINTER END PARTY 2020」という配信を行う。コンサートが出来なくなってしまったKAJIMOTO所属のアーティストが続々と駆けつけ、あり得ないほどの豪華な顔ぶれが出そろう。
ちなみにタイトルが大阪弁なのは、KAJIMOTOが大阪発祥の事務所だからだそうである。

基本的に全員ボヘミアンな人達なので、つば九郎もびっくりのフリーダム空間が現出する。

まずは指揮者の三ツ橋敬子とヴァイオリンの辻彩奈が登場。やおら眼鏡を取り出して、眼鏡女子になってのスタートである。意味はよくわからない。
そして、指揮者の角田鋼亮(つのだ・こうすけ)が現れる。三人とも名古屋の街にゆかりがあるということで、番組のタイトルを名古屋弁で言ってみたりする。
YouTubeライブなので、チャットとしてメッセージを打ち込むことが出来るのだが、角田さんがまず読み上げたのは、「実際には『みゃー』とは言わない名古屋」である。これは実は私の書き込みで、しかもこの日送った中で最も下らない書き込みである。そもそも音楽ネタですらない。あるいは下らなかったり意味がなかったりする書き込みの方が浮いているので目に入りやすいのかも知れない。ただ角田さんは、「そうなんですよね。よく言われるんですが」ということで、都市伝説ではなく本当に「名古屋の人って、みゃーみゃー言うんでしょ」と言われることが多いようである。
角田と三ツ橋は、芸大の指揮科の同期だそうで、「つのくん」「みっちゃん」と呼び合う。そうか三ツ橋さんは苗字があだ名になるのか。角田は三ツ橋に、「あれ、年ばれちゃうけどいいの?」と聞いていたが、三ツ橋は生年月日を公表しているので、全く問題としていないようである。三ツ橋に対してはやたらと「可愛い」コメントが届く。


辻彩奈は、コンサートで弾く予定だったブルッフのスコットランド幻想曲の第3楽章を江口玲(あきら)のピアノをバックに演奏。本格的なマイクセッティングは望めないので、雑音も多いが、スケールの大きく美麗な演奏を展開。江口玲はソロで、ラフマニノフ作品を演奏。パガニーニの主題による変奏曲の第18変奏のピアノ独奏版編曲ではこぼれるようなロマンティシズムでたっぷりと弾き、コメントも大いに沸く。

 

その後、江口玲が司会役となり、ヴァイオリニストの神尾真由子が登場。コメントに「神尾様」という言葉が並び、江口に、「神尾様って呼ばれてるんですね」と感心される。
移動の飛行機の中で何をしているかという話になり、神尾は「映像見たり本読んだり」という普通の答え。ちなみに三ツ橋敬子は指揮者ということもあって飛行機の中でもずっとスコアを研究しているようである。
神尾が大阪出身ということで、番組タイトルを大阪弁で読んで貰うが、「あんまり使わない」ということで自信がなさそうであった。

神尾真由子が演奏するのは、J・S・バッハの「シャコンヌ」。曲名が発表された瞬間にやはりコメントが熱狂する。
ビブラートを抑え気味の演奏であるが、やはり神尾らしいの情熱的なバッハとなる。「踊れる」というコメントがあったり、「神様、仏様、稲尾様」ならぬ「神様、仏様、神尾様」という言葉が綴られたりする。

 

演奏が行われている間にキッチンでは(KAJIMOTOの社長の家での収録とのことだったが本当かどうかはわからない)オーボイストの古部賢一が得意の料理を行っており、指揮者のクリスティアン・アルミンクがジャガイモの皮剥き手伝う。KAJIMOTOのTwitterでは、裏映像が公開されており、CMの間にTwitterの映像を見に行く人も多い。

アルミンクは、群馬交響楽団を指揮してマーラーの交響曲第2番「復活」の演奏を行う予定だったが中止に。そしてロームシアター京都での小澤征爾音楽塾の喜歌劇「こうもり」でも指揮を行う予定だったが、これも流れてしまっている。ヴィオリストの川本嘉子も後に登場するが、共に「こうもり」の演奏や小澤征爾音楽塾の塾生への指導を行う予定だったそうで残念そうであった。


出来上がった料理を食べるシーンでは、アルミンクが箸を器用に操っていることを私を含め数人が指摘。ソプラノ歌手の天羽明惠(あもう・あきえ)が通訳を務めていたが、アルミンクは、「僕は半分東京生まれのようなものだから」とジョークを飛ばしていた。
アルミンクと古部、天羽に指揮者兼コントラバス奏者の中田延亮(のぶあき)、ギタリストの鈴木大介も加わり、中田の司会で話が進んでいく。「天羽さんの話も聞きたい」というコメントもあったが、天羽本人は話すのは得意ではないようで、基本的にアルミンクの通訳に徹していた。

演奏会の前に何を食べるのかという話になり、アルミンクが「バナナ」と答えて、みんなが同意。ちなみにオペラ歌手は本番前には何も食べないそうである。古部によるとオーボエを演奏する前には、イチゴやゴマといった粒々のものは絶対に食べてはいけないそうだ。青のりも駄目なので、たこ焼きなども禁忌となるらしい。

 

古部が大阪出身ということで、タイトルをネイティブの大阪弁で読んで貰う。表記は「好きやねん」であるが、やはり本場の人は「すっきゃねん」と発音するようである。

 

天羽明惠のソプラノ、鈴木大介のギター伴奏で、グノー/バッハの「アヴェ・マリア」や山田耕筰の「からたちの花」、シューベルトの「野バラ」、「鱒」などが歌われるが、天羽はカメラの目の前で歌うことが初めてのようで、「恥ずかしい」「怖くて怖くてたまらない」と語っていた。

 

その後、萩原麻未、成田達輝の夫妻が登場。中田延亮が萩原麻未のことを本気で「オギワラさん」と呼んでしまい、謝っていたが、やはりよく間違えられるそうで、しかも学生時代のあだ名がなぜか「オギノ」だったという、ややこしい話になる。二人でクライスラー作品などを演奏。夫婦ならでは、なのかどうかはわからないが一体感のある演奏である。1曲目の「愛の悲しみ」では、成田君が弾き始めてから、楽譜を探していた萩原さんが「あー、待って!」と言って慌てて伴奏を開始するなど、とても家庭的な演奏である。音楽サロンに紛れ込んでしまったような気分になる。
成田達輝のソロの場面では、萩原麻未がカメラに向かって笑顔で手を振るなど、かなりの余裕を見せていた。

Twitter動画では、成田君がおどけて「きょうの料理」のテーマ(冨田勲作曲である)を弾く場面なども見られた。

 

音楽家達もコメントを面白がっているようで、たまに見切れる三ツ橋さんがタブレットの画面をじっと見つめているのが確認出来る。ヴィオラ奏者の安達真理がハートマークなどでさりげなくコメントに参加しているのも楽しい。


今年の4月からKAJIMOTO所属になるというサックス奏者の斎藤健太が、ソプラノサックスでバッハの無伴奏フルートのためのパルティータを演奏。


続いて、斎藤を紹介したトロンボーン奏者の中川英二郎がまずソロで「チキン」を演奏し、江口玲と「G線上のアリア」とモンティの「チャルーダッシュ」で共演。中川の吹く「チャルーダッシュ」は私も京都市交響楽団オーケストラ・ディスカバリーで聴いているが、普通に考えるとトロンボーンでの演奏は不可能な曲を軽々と吹いてしまう。

 

ギタリストの大萩康司(おおはぎ・やすじ)の演奏。コメントでリクエストが多かった「タンゴ・アン・スカイ」をまず演奏し、続いて武満徹の「翼」のギター編曲版を弾く。

 

カウンターテナーの藤木大地が登場。大萩の伴奏で、武満の「小さな空」を歌う。が、鈴木大介がセカンドギターとして突如参戦し、藤木も驚く。

ギターが大御所の荘村清志(しょうむら・きよし)に代わり、瀧廉太郎の「花」が歌われるのだが、今度は天羽明惠が突然の参戦。またも驚いた藤木は、どちらのパートを歌えばいいのかわからず混乱する。天羽の歌声はソプラノであり、ソプラノと共演する場合は藤木はアルトパートを受け持つことが多いのでアルトに切り替えようとして上手くいかなかったようだ。
もう一度、ということで再び「花」が歌われるが、今度はなぜかヴァイオリニストの成田達輝が歌に加わるといった調子で、もはやなんでもありである。

 

荘村清志のソロは「アルハンブラの思い出」。中学生の頃、東芝EMI/イースト・ワールドから出ていたCDで荘村清志の弾く「アルハンブラの思い出」を良く聴いており、意識が一気に30年前に戻ったりする。

 

そして、アコーディオン奏者のcobaが登場。ピアソラの「リベルタンゴ」を弾くか、自作で「リベルタンゴ」を上回るつもりで書いた「カンパーナ(鐘)」を弾くかを拍手の大きさで決めようとするが、「リベルタンゴ」に拍手する音楽家は誰もおらず、自作の「カンパーナ」を弾く。
「リバルタンゴ」はアンコールとして弾かれたが、アコーディオンの性能を極限まで引き出した超絶技巧による演奏で、会場もコメントも熱狂する。cobaが悪乗りで「KAJIMOTO万歳!」を叫び、コメントもそれに追従する。
ちなみにcobaは、荘村清志に頼まれてギター協奏曲を作曲したそうで、今月の29日初演を迎えるそうである。(後記:残念ながら公演は中止。初演は延期となった)

 

トリを務めるのは、フルートの工藤重典とギターの荘村清志。ピアソラ繋がりで、「タンゴの歴史」より「ボロデル」と「カフェ」を演奏。天翔るフルートである。
アンコールとして、イベールの「間奏曲」が演奏され、全てのプログラムが終了する。

当初は午後10時までの配信予定であったが、大幅に伸び、終わったのは午後11時半近く。実に約6時間半の長丁場であった。

 

アーカイブ https://www.youtube.com/watch?v=WJ3TViQHBxA&t=13877s

ハイライト https://www.youtube.com/watch?v=by70023awGM

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