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2020年5月20日 (水)

これまでに観た映画より(176) 岩井俊二監督作品「花とアリス」

2004年10月20日

DVDで「花とアリス」を観る。岩井俊二監督作品。音楽も岩井監督自身が手掛けている。割合シンプルなメロディーで聴けば聴くほど「四月物語」の音楽に似ている。ということで「四月物語」の音楽も別人名義(女性名。ただし検索しても「四月物語」の作曲担当者としてしかヒットしないため架空の人物であることがわかる)であったが岩井俊二監督が作曲したものであることがわかる。

最初のシーンから全体を撮す定点カットと視点カットをつなげてみたり、故意にカットを短くしてしかも間を省いて、あたかも漫画のコマを見ているような効果を出している。岩井監督は大学時代に漫画家としての才能を認められたことから物語制作を始めているので、漫画を意識していることは間違いない。

桜や電車の中、学校や海岸、落語などノスタルジアを掻き立てる、いかにも日本的な風景を撮っているのだが、映像が日本映画離れした美しさを持つためにあたかも他人の夢に迷い込んだかのような、どこでもない場所にふわふわと浮かんでいるかのような不思議な感慨にとらわれる。

バレリーナの格好で暗闇で写真を撮るシーンはわざと逆光にしてぼかすなど技術的にも興味深い。

先輩を好きになって、それで嘘を付いたことから始まる可愛らしい話なのだが、心理的に鋭いところをついている。

有名人をワンポイントで使ったり、ユーモラスなくすぐりも絶妙だ。アリスが「ストーカーって怖くない?」と言いながらストーカーまがいに相手を隠し撮りするところなど、突っ込みたくなる要素も満載。アリスこと有栖川徹子の今は別居する父親の名字が黒柳だったりするのも突っ込みどころである。

蒼井優が演じるアリスは劇中では演技が下手な設定だが、蒼井優はそれを見るに堪える水準で演技する。つまり演技が下手な女の子を、その女の子には無い技術を持って同じように演じてみせる。例えば、「くしゃみをする」シーンでアリスは上手く出来ないのに、その直後に蒼井優は見事にくしゃみをしてみせるのだ。これは二重に面白い。「雨に唄えば」の世界のようだ。

偽りの記憶を生み出していく過程なども、物語を生み出す行程にリンクしており、映画がまさにこの場で生成されているようで、これもまた感興を誘う。海岸での縄跳びのシーンはかなり即興的にやらせていると思う。

蒼井優は「リリィ・シュシュのすべて」ではいじめっ子を演じていた。その後、「三井のリハウス」のCMなどでブラウン管(2004年当時はこうした表現でした)でも顔を見かけるようになる。今後も出演映画が目白押しだ。
鈴木杏はTBSドラマ「青い鳥」で有名になったが、それ以前にもハリウッド映画「ヒマラヤ杉に降る雪」に11歳で出演するなど、幼い頃からキャリアを積んでいる。

幸福な気分にさせられる幸福な映画である。映像の美しさだけでも見る価値があるが、話も、多少少女趣味だったりするが面白い。

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