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2020年5月 9日 (土)

これまでに観た映画より(171) 「恋する惑星」

※この記事は2004年10月12日に書かれたものを基にしています

ビデオで王家衛監督の「恋する惑星」を観る。王家衛(ウォン・カーウァイ)監督作品。1994年制作の香港映画である。日本公開は翌95年で、私は銀座テアトル西友(現・銀座テアトルシネマ)で5回観ている。同じ映画館で観た映画としては私の持つ最高記録となる。

原題は「重慶森林」だが、これは「重慶(中国の重慶ではなく香港の重慶地区)の森」という意味である。これは村上春樹の『ノルウェイの森』に由来するタイトルである。映画の登場人物は皆、気取った話し方やモノローグ、また持ち物も「LOFT」の袋だったり、当時の香港としてはかなりスノッブなのだが、これは村上春樹の影響を受けた俗に言う「春樹族」をモチーフにしているためだ。王家衛監督も春樹族であると自ら認めている。

撮影は重慶マンション付近を中心に行われたが、許可が下りず、無許可でゲリラ的に撮影されている。カメラマンはおなじみ杜可風(クリフトファー・ドイル)。

これは大変な傑作で大いに感化された。

仲間に裏切られた麻薬の売人(ブリジット・リン)と失恋中の刑事モウ(漢字で書くとおそらく某。演じるのは金城武)の一夜の出会いを描く第1エピソードと、これまた失恋中の刑事633号(トニー・レオン)と彼の部屋にかってに上がり込んで模様替えをしてしまう変な女の子(フェイ・ウォン)の恋を追う第2エピソードの2話オムニバス。殺し屋を主人公にした第3エピソードもあったがカットされ、これはのちに「天使の涙(原題:堕落天使)」として公開される。
いずれも恋愛という古いテーマを題材に新しい物語を生み出している。

冒頭の揺らぐ画像から惹きつけられる。撮影は順撮りではなく、バラバラに行われたので、出演者は完成するまでどんな映画なのかわからなかったそうだ。

インド人が出て来たり、セリフに北京語、広東語、英語、日本語が使われていたりと徹底したアジアテイストの映画である。

金城武がパイナップルを食べるシーンが印象的だが、金城は本当はパイナップルが嫌いだそうで、それを知った王監督(というと別の人みたいだ)が即興的にいれた場面だそうである。

ブリジット・リンの後ろをトラのぬいぐるみを抱えたフェイ・ウォンが、また、「三浦友和、覚悟しろ!(元々は「三浦友和,我要杀了你!」=「三浦友和、ぶっ殺す!」というかなり物騒なもので、山口百恵似の彼女が新しい彼氏を作り、三浦友和に似ていない自分は振られたということで、こうしたセリフとなっている)と叫びながら金城武がエスカレーターを駆け上がるシーンでトニー・レオンが映っている。

香港の裏社会に触れながらも映像もストーリーもポップだ。年上の女性への一瞬の恋心を巧みにすくい取っている。

変な女の子と鈍い警官633号との恋愛を描く第2エピソード。フェイが演じる女の子の乙女心が可愛らしい。彼(警官633号)に逢うために、口実を作るのだがそれが下手なのも逆に微笑ましい。突拍子もない女の子だが、おそらく女性なら共感できるところも多いと思われる。気づいて貰いたいのに気づいて貰えないもどかしさや恋の綱渡りをする冒険心。
「夢のカリフォルニア」が印象的な使われ方をしていたが、私はこれが気に入り、パパス&ママスのCDを買った。「恋する惑星」のサントラも買ったが、著作権の関係だと思われるが、こちらには「夢のカリフォルニア」は入っていない。

フェイ(役名もフェイ)のやっていることは結局は押しつけだし、633号もかなりのアホなのだが、二人とも夢のなかの人物のようで憎めないところがある。主題歌はクランベリーズの「Dreams」をカバーした、フェイ・ウォンの「夢中人」。この物語のモチーフとなっている。

返還前の香港を舞台にしたキュートな一編である。

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