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2020年6月 5日 (金)

これまでに観た映画より(180) 王家衛(ウォン・カーウァイ)監督作品「天使の涙(堕落天使)」

2004年11月2日

ビデオで「天使の涙」を観る。1996年日本公開の香港映画。王家衛(ウォン・カーウァイ)監督作品。王家衛の登場で香港映画のイメージがカンフー映画からポップな先鋭作品に変わってしまった気がする。この映画を私は渋谷のスペイン坂の上にあったシネマライズで2度観ている。

出演:金城武、レオン・ライ、ミシェル・リー、チャーリー・ヤン、カレン・モク。撮影監督:クリストファー・ドイル。

殺し屋とそのエージェンシーの女、そしてパイナップルの食べ過ぎで口がきけなくなった青年の怖ろしく孤独な三人を描く。もともとは「恋する惑星」の第3エピソードであったが、長すぎたため独立したようだ。パイナップルの食べ過ぎで口がきけなくなった青年を演じているのは金城武。前作「恋する惑星」のあのシーンからのパロディ。役名も同じくモウだが別人だ。

広角レンズを使って場面を歪めている。

エージェンシーの女(ミシェル・リー)は殺し屋(レオン・ライ)に恋心を抱いている。しかし彼女は不器用でたまに殺し屋に会っても満足に話すことも出来ない。殺し屋の部屋から出されたゴミを漁って内容を確認するような危なさも持っている。彼女が自慰にふける場面は話題になったが、性格からいって彼女に本当に男性経験があるのかどうかはわからない。

殺し屋もまた不器用な男で人と上手く渡り合えない。常に受け身の性格であり、殺し屋になったのも頼まれた殺しをすればいいだけという理由である。自分から人生を選ぶために積極的に行動した経験がほとんどないようだ。エージェンシーの女と別れて、他の女(カレン・モク)と付き合うが、結局、彼は誰も愛せない男のような気もする。

金城武演じる青年がこれまた困ったことに夜中に勝手に他人の店を開けて商売を始め、路上の人を無理矢理店に入れてものを売りつけたり、勝手に散髪をして金を脅し取ったりしている。

コミュニケーション不全が大きなテーマとなっている。

鏡に映る自分をのぞく場面は内面の自己とのにらめっこだ。自己とは対話を交わすのに、他人とは心を交わせない。

エージェンシーの女は殺し屋を裏切り、青年も初恋の女性にあっさりと捨てられる。初恋の女性(チャーリー・ヤン)や殺し屋を誘う女性(カレン・モク)は、みな変わっているものの積極的に人と関わろうとしているのだが、三人の主人公は美男美女なのに他者との交流が出来ない。
青年のバイクの後部座席に座りながら生まれて初めて「永遠の温かさ」を知るエージェンシーの女。椎名林檎の世界のようだ。

金城武がセリフ一切なしという難役に挑んで成功している。かなりアドリブが多かったそうだ。

殺し屋を演じるレオン・ライが格好いい。男前で凄みがあるが濃い影を持つ男を好演している。

映像も美しい。おなじみクリストファー・ドイルのカメラワークも見所の一つ。

「恋する惑星」のパロディが数カ所あるがいずれも笑える。

どこもかしこも、「ほぼ完璧」の水準に達している。香港ニューウェーブの最高傑作に挙げたい。

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