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2020年7月の2件の記事

2020年7月 2日 (木)

これまでに観た映画より(185) 「Shall We ダンス?」

2005年5月6日

テレビで映画「Shall We ダンス?」を見る。周防正行監督作品。役所広司、草刈民代主演。

ロードショーの時に有楽町マリオンで観てからビデオでも何回も見直しているが、今日久しぶりに見て、やはり良い映画だなと、素直に思う。
心理描写の巧さがあり、登場人物が何を考え、何故そういう行動に出るのかが手に取るようにわかる。これは周防監督の才能だろう。誰にでも出来ることではない。

私も、二十歳そこそこではわからならかったことも今ではわかるようになっている。男であることの寂しさや、中年女性の気持ちなども。
セリフでのくすぐりも最高である。笑いのお手本のようなセリフが各所に散りばめられている。

この映画については私も色々と関係する書物を読んでいるからちょっとだけ詳しい。

まず、駅前に何故ダンススクールが多いのかという周防監督の疑問からこの映画は始まった(私自身もJR両国駅のホームから「浮いたダンススクール」、じゃなかった「浮田ダンススクール」という看板と教室が見えるので苦笑していたクチだ)。そして実際にスクールに行ってみる。するとあまり体型がいいとは言えない中年の男女が踊っている。こんなに見て可笑しいものはないと、プロットはすぐに出来たそうだ。
主演俳優は竹中直人で行こうか、とも思ったそうだが、「竹中さんだと、例えば電車の中でガクッとなっても疲れたんじゃなくて、ギャグでやっていると思われるんじゃないか」ということで変更。ある人から「役所広司さんが良いんじゃないの?」と言われたが、当初は周防監督は反対したそうだ。「役所さんじゃ格好良すぎる。あれじゃ女の人にもてちゃう」。だが一度会ってみたらということになり、実際に役所広司と話した時に「いける」と思ったそうだ。最後に周防監督が「格好悪い中年男は演れますか?」と訊くと、役所は「それだけには自信があります」と答えたという。

主演女優を誰にしようかと三人に相談したところ、三人が三人とも「草刈さんがいいんじゃない」というので周防監督も草刈民代に会いに行った。雰囲気がまず違ったという。一流のバレリーナとして本当に若い頃から活躍してきた誇りや佇まいの美しさ、浮世離れした感じなど。「セリフ喋れなくてもいいからこの人でいこう」と即決定。実際、この時の草刈民代はセリフは上手くない。だがあの雰囲気は他の人では出すことは難しいと思う。

竹中直人が演じるのは青木、田口浩正は田中。実はこれ、周防監督の「シコふんじゃった。」の時と同じ役名である。

ダンスホールのぶっ飛んだ感じの歌姫、夏子(これも「シコふんじゃった。」と同じ役名)を演じるのは清水美砂。普段の彼女のイメージと全く違うので気がつかなかった人も多かったそうだ。歌い終わった後でロングスカートを投げ捨てるのは清水のアドリブだという。

ラストシーンで草刈民代が「Shall We Dance?」と訊いた時の役所広司のリアクションは異なる演技で6回撮り、6回ともOKだったという。周防監督も役所広司という役者の実力に舌を巻いたそうだ。

周防監督は「映画館に中年を呼び戻したい」と思ってこの映画を作っている。実際、有楽町マリオンにも中年の男女が沢山入っていた。
社交ダンスに対する偏見もこの映画の封切り以降、確実に減った。

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2020年7月 1日 (水)

配信公演 飯守泰次郎指揮 東京交響楽団主催川崎定期演奏会 第76回「Live from MUZA!」(文字のみ)

2020年6月28日 ミューザ川崎シンフォニーホールからの配信

午後2時から、ニコニコ生放送で、東京交響楽団主催川崎定期演奏会 第76回「Live from MUZA!」を視聴。ミューザ川崎シンフォニーホールで行われる演奏会の配信である。聴衆を入れての公演であるが、左右1席空けでディスタンスを保てるようにしている。
指揮は飯守泰次郎。

ギフトという形で投げ銭が行えるようになっている。

曲目は、ベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番(ピアノ独奏:田部京子)、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」

指揮者や管楽器以外のオーケストラプレーヤー、ソリストなど全員が全員マスクを着けての演奏である。これまで観てきた緊急事態宣言発令以降の配信ライブでは、弦楽器奏者の譜面台は一人一台であったが、今日は二人(1プルト)で一台という通常の形式での演奏となる。


ベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲。弦楽はビブラートはかなり掛けるが、ボウイングや音型の処理などにピリオドの影響が窺える。ティンパニの強打も効果的。
端正な造形美を誇る飯守らしい好演で、ベートーヴェンらしい生命力にも溢れている。


ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。
ピアノ独奏の田部京子は叙情的な作品を得意とするピアニスト。グリーグのピアノ協奏曲などを十八番にしており、吉松隆作品なども世界初録音している。

彼女らしい雪解け水のような澄み切った音色が生かされたベートーヴェン。飯守指揮する東響同様、推進力もあり、若々しいベートーヴェン演奏となる。東響は弦の一音ずつに力を込めるような旋律の奏で方が、「プロメテウスの創造物」よりもピリオド寄りに聞こえた。

田部のアンコール演奏は、メンデルスゾーンの「無言歌」第2集より「ヴェニスの舟歌」。後半のプログラムへと繋ぐ曲であり、田部のリリシズムが最大限に生かされていた。


メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。スコットランドを舞台としたドラマが目に見えるようなロマン派を代表する交響曲である。通常は全曲が休みなしで演奏されるが、今回は第2楽章と第3楽章の間に少しだけ休みを入れていた。
日本におけるワーグナー演奏の泰斗である飯守の指揮だけあって、語り上手でロマンティックな仕上がりとなる。東響の仄暗さから輝かしさまで幅広い音のパレットも魅力。なかなかスケールが大きく、HIPではないがティンパニの強打がこの曲でも効果的であった。

演奏終了後、飯守は黒いマスクを取って笑顔を見せ、更にオーケストラメンバーがステージを後にしても拍手が鳴り止まなかったため、飯守一人が姿を見せて拍手を受けるという、俗にいう一般参賀も行われる。良い演奏会であった。

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