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2020年8月31日 (月)

配信公演 三谷幸喜 作・演出「大地」(Social Distance Version) 2020.8.22

2020年8月22日 大阪・西梅田のサンケイホールブリーゼより配信

8月13日にサンケイホールブリーゼで観た時の感想と一部が重複します

午後6時から、大阪・西梅田のサンケイホールブリーゼで上演される三谷幸喜の「大地」をぴあのライブ配信で視聴。一時、音声が聞こえないというトラブルがあったが、劇中で肝心要のセリフが聞こえなくなるということは避けることが出来た。

8月13日にサンケイホールブリーゼで実際に観ている舞台であるが、内容を知った後に映像で観るというのも一つの楽しみ方である。思えば、初めて自分でチケットを買って(当日券であったが)観た舞台は、新宿の紀伊國屋ホールで上演された東京サンシャインボーイズの「ショウ・マスト・ゴー・オン 幕をおろすな」であり、これはNHKによって収録され、後日、BS2(今のBSプレミアム)で放送されたものも視聴。ビデオに録画して何度も見返すということをやっていた。今は「ショウ・マスト・ゴー・オン」はNHKからDVDが出ている。ちなみに映像では「高崎名物だるま弁当」が「高崎名物だるまさん弁当」になっているが、NHKでの放送ということで、商標を避けるためにセリフを変えて貰ったのだと思われる。

「ショウ・マスト・ゴー・オン」はバックステージものだが、三谷幸喜の裏方へ眼差しが感じ取れる重要な作品であり、それはこの「大地」にも繋がっているように思われる。

 

1回観ているということで、大体の展開はすでに知っているのだが、細かいところやさりげなく出されていた伏線の妙などを楽しむことが出来た。

チャペック(大泉洋が演じていた)の悲劇は、すでに前半の部分から提示されている。チャペック本人のセリフや、ストーリーテラーを兼ねる濱田龍臣の語りにもそれは含まれているのだが、俳優達や大道芸人のピンカス(藤井隆)やパントマイムのプルーハ(浅野和之)といったセリフを使わない芸能の人までもが想像力の宴を開いている中で、バラック3に収容されているメンバーの中でただ一人、チャペックだけが輪に入っていけない。それだけの実力がないということである。ここで、九代目松本幸四郎(現・二代目松本白鸚)と七代目市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)の二人芝居「バイ・マイ・セルフ」が思い出される。松本幸四郎演じる無名の老優は自身の人生に特筆すべき事項がないことで悩むが、市川染五郎演じるフリーライターから「あなたは普通の人なんでしょう。普通で良いんです。普通だから良いですよ」と諭される場面がある。
老優もフリーライターも平凡な人間であり、特別な「何者か」でないことの意味が語られるのだが、その主題が「大地」において再びここに現れたように見える。それは圧倒的多数となる「凡才」の存在意義に繋がっていく。

チャペックは自身の行いにより、自身から復讐されるのであるが、それは他の俳優達も同じであった。映画スターであったブロツキー(山本耕史)も現実の世界ではヒーローになるには力不足であったということを生涯引きずっていたことが示されている。

この劇において最も重要だと思われるセリフは、マルチン・ルターのものとされる「たとえ明日地球が滅ぶとしても、私は大地に林檎の木を植える」という言葉の引用である(原文には「大地」という言葉は出てこないようである)。ここでどうしても林檎に目が行きがちになるが、タイトルから察するに、着目すべきはむしろ大地の方である。大切なのは林檎だが、それが育つには大地の存在が不可欠だ。
この世のあらゆる事象や巡り会った人々は俳優の糧となるが、それらの比喩として用いられているのが「大地」である。人々に「生きる希望」をもたらす良き俳優や良き芝居は、そのベースとなる大地があってこそ育まれるのであり、循環していく。それを忘れてはいけないということである。

私も「大地」の一人として、それをしっかり受け止めることが出来たように思う。

 

ちなみに休憩時間には、三谷幸喜が出演者にインタビューするという形での映像が流れたが、この作品で19歳にして初舞台を踏んだ濱田龍臣へのメッセージが多く語られていた。
ズデンカ役のまりゑは、濱田に休日に何をしているか聞いたそうだが、「ゲームを10時間やってラーメンを食べる」という答えに呆れ、「もっと演劇観なさい、映画観なさい」とアドバイスしたそうである。

 

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