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2020年8月22日 (土)

これまでに観た映画より(200) 瀬々敬久監督作品「HYSTERIC」

2005年11月14日

DVD映画「HYSTERIC」を観る。小島聖、千原浩史(千原ジュニア)主演。脇役として、鶴見辰吾、村上淳、余貴美子、阿部寛などが出演している。
監督はピンク映画を撮らせたら現在ナンバー1と呼ばれる瀬々敬久。京大出身の監督である。
もちろん、出演者の顔ぶれを見ればわかると思うが、この映画はヌードシーンこそあるものの、ピンク映画ではない。

1994年に起こった青山学院大生殺害事件を基にした映画。ただノンフィクションではなく細部は変えてある。
青学大生殺害事件は無軌道な若者による場当たり的な犯行として、また犯人の男が殺人に全く罪の意識を感じていなかったということで、日本犯罪史上に残る凶悪事件である。

宮崎の高校を卒業後、岐阜県に出て、会社で働きながら短大で保母の資格を取ることを目指している真美(小島聖)。ある日、突然の大雨に降られて雨宿りをしていたところで偶然、智彰という若い男(千原浩史)と出会う。無口な性格で友達も恋人もいない真美は智彰の笑顔に癒され、惹かれていく。しかし智彰は、ピッキングや空き巣、強盗などを繰り返す危険な男だった。だが、真美は智彰から離れることが出来ない。

孤独で人生に面白さを感じられなかった女性が、奔放で残酷で幼稚で、それ故に魅力的で、かつ自分を心から好きになってくれた男と無軌道な人生を歩んでしまうという、悲しい物語。

モノクロームの挿入や、前後する時間、抒情的部分の耽美的傾向など、ありきたりな部分も多いが、暴力的な場面が多ければ多いほど、リリカルな印象が増していくのが不思議である。

真美は両親が離婚したため、祖父母に育てられた。それ故、幸せな家庭への憧れは人一倍強い、ということが示される。にもかかわらず、幸せとは別の方向へ動いていってしまう。わかっているのにやめられないという人間の弱さ。

アウトサイダーの智彰とのスリルある生活はある意味、麻薬的なものだったのかも知れない。心の底では真美は自分がこれまで押し込められていた社会を破壊したかったのだろう。社会からドロップアウトした自由と不安、そこから逃げたいのに逆に惹かれてしまうという人間の矛盾。

青学大生殺害犯二人はすぐに逮捕されたのだが、この映画の主人公二人はその後も警察の手を逃れる。ふとしたことで離れてしまった二人が、6年後の2000年に再会する。真美は充(阿部寛)と結婚していた(阿部寛が普通の人を演じているのを見るのは久々の気がするが気のせいだろうか)。

結末は希望を感じさせるものだが、何故もっと早く希望を見つけられなかったのか。そして真美は本当に智彰を愛していたのか。結局は真美も智彰を現実逃避のために利用していたのではないか。それを思うと却って切なくなってしまう。

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