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2020年8月26日 (水)

配信公演 ニコニコ生放送 大谷康子弾き振り 東京交響楽団「モーツァルト・マチネー第42回」@ミューザ川崎(文字のみ)

2020年8月22日 ミューザ川崎シンフォニーホールからの配信

午前11時から、ミューザ川崎シンフォニーホールで行われる東京交響楽団の「モーツァルト・マチネー第42回」のニコニコ生放送での配信を視聴。

今日は大谷康子の弾き振りによる2曲である。上演時間約1時間、休憩なし、ソーシャルディスタンスを保った上での有観客公演である。

曲目は、2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ(ヴァイオリン:大谷康子&水谷晃)とヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(ヴァイオリン独奏:大谷康子)。

大谷康子は、東京交響楽団のコンサートマスターを経てソロ・コンサートマスターに就任。退任後は同楽団の名誉コンサートマスターの称号を受けている。東京交響楽団の前は、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のコンサートマスターを務めていたが、その頃の東京シティ・フィルは、黛敏郎司会の「題名のない音楽会」で演奏を担当することが多く、コンサートマスターである大谷の姿は目立っていた。


ニコニコ生放送なのでコメントを送ることが出来る。私も参加する。大谷が弾き振りをするのを見て、「ヴァイオリン出身の指揮者、余りいない気がする」とコメントした人がいたが、そこから有名指揮者が指揮者になる前に弾いていた楽器は何かというやり取りが続く。ヴァイオリン出身で有名なのは、ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督であるヤープ・ヴァン・ズヴェーデンで、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートマスターからの転身である。ニューヨーク・フィルの先の音楽監督であるアラン・ギルバートも自分の楽器としていたのはヴァイオリンである。
古くはシャルル・ミュンシュがライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスター出身で、その時代にゲヴァントハウスの指揮者だったヴィルヘルム・フルトヴェングラーの影響を受けて指揮者に転向している。
近年では、サカリ・オラモがフィンランド放送交響楽団のコンサートマスター出身である。
朝比奈隆もアマチュアとしてであったが、ヴァイオリニストとして活躍していた時期がある。
関西フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者であるオーギュスタン・デュメイの場合は本業はヴァイオリニストであるが、指揮者としての仕事を増やしている最中である。

ピアノ出身者は多く、引退したがウラディーミル・アシュケナージ、ダニエル・バレンボイム、更にサー・ゲオルグ・ショルティやチョン・ミョンフンもピアニストとして活躍してから、指揮者に転身。アシュケナージは指揮は我流であり、振り方も不器用であった。20世紀後半の二大巨頭であるヘルベルト・フォン・カラヤンとレナード・バーンスタインも得意としていたのはピアノである。バーンスタインはピアノ協奏曲をいくつか弾き振り振りで録音。カラヤンも晩年にヴィヴァルディの「四季」をチェンバロの弾き振りで録音している。
日本では、広上淳一(今ではピアニカ奏者のようになっているが)、大植英次、沼尻竜典、上岡敏之などがピアノの名手であり、沼尻と上岡はピアニストとしてもCDをリリースしている。
ミハイル・プレトニョフは、一時期はピアニストを廃業して指揮者専業となったが、最近はピアノも弾き始めている。クリストフ・エッシェンバッハも同傾向だ。

ヴィオラ出身は、シャルル・デュトワやユーリ・バシュメット(バシュメットの場合も本業はヴィオリストである)、古くはヴァーツラフ・ノイマンがいる。チェロは齋藤秀雄やムフティスラフ・ロストロポーヴィチ(前者は教育者で、後者は指揮者としての名声は上がらず)、更に20世紀前半を代表する指揮者であるアルトゥーロ・トスカニーニはチェロ奏者から無理矢理指揮者に転向させられている。

コントラバスは井上道義や本名徹次、トランペットは下野竜也や山本直純、ホルンにはエサ=ペッカ・サロネンがいる。サー・サイモン・ラトルやパーヴォ・ヤルヴィは打楽器出身である。佐渡裕は京都市立芸術大学のフルート科出身であり、リコーダーも得意とする。リコーダー出身の指揮者としてはフランス・ブリュッヘンが有名である。

冗談で「小澤はスクーター」と書かれていたが、小澤征爾の著書『ボクの音楽武者修行』などにフランスに留学した際、マルセイユからパリまでスクーターで移動したことが書かれている。実際の小澤征爾の楽器はピアノであり、幼い頃はピアニストを目指していたものの、成城学園時代にラグビー部に所属していて、練習中に両手の人差し指を骨折したため、ピアニストを諦めて指揮者になるための勉強を始めている。

意外なのは山田一雄で、専攻したのはピアノだが、ハープの演奏も得意としていた。


演奏と関係ない話が続いたが、2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネはモーツァルトが十代だった頃の作品である。

大谷康子の明るく張りのある音と、現在の東京交響楽団のコンサートマスターである水谷晃の渋めの音色との対照の妙が印象的な演奏である。二人のアイコンタクトが実に微笑ましい。短調の部分の影は十代にして十分に濃い。


ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」。大谷のヴァイオリンは気品に溢れ、丁寧である。ソリストとしてではなく、オーケストラのコンサートマスターとして活躍してきたこともあって、スケールの大きさよりも親密さを表に出した仕上がりとなっていた。

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