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2020年8月 3日 (月)

これまでに観た映画より(195) 竹中直人監督作品「119」

2005年8月8日

ビデオで映画「119」を観る。1994年の12月に銀座(なのか築地なのか、正確にはよくわからないところにある)の東劇でロードショーを観て、感銘を受けた作品である。竹中直人監督作。主演は赤井英和、鈴木京香ほか。脚本は、「失楽園」の筒井ともみ、劇作家の宮沢章夫、監督である竹中直人の三人が手掛けた。消防隊員の活躍を描く、否、活躍しない消防隊員を描いた映画。

もう20年近くも火事が起きていない波楽里(はらり)という海沿いの架空の町が舞台。何も起こらない町のちょっとした出来事を扱っている。
消防隊員を演じるのは、竹中直人、赤井英和をはじめ、当時は無名だった浅野忠信と津田寛治。当時は今より無名だった温水洋一。映画監督でもある塚本晋也。

あまり映画に出ない人や、本業が俳優でない人も出演している。例えば、岩松了(劇作家・演出家)、周防正行(映画監督)、松岡錠司(映画監督)、昨日観てきたク・ナウカの演出家である宮城聰、佐野史郎の奥さん・石川真希、故・マルセ太郎など。
ちょい役で大塚寧々や真田広之なども出ている。

その他にも「また逢う日まで」の久我美子が出演。また写真のみの出演に「また逢う日まで」の故・岡田英次(久我美子演じる鴨下のおばさんの亡くなった旦那さんという設定。岡田は「119」公開の翌年、1995年に亡くなっている)、「無能の人」で竹中と共演した風吹ジュン(竹中直人演じる津田の亡くなった奥さんという設定)。

撮影当時、26歳だった鈴木京香が実にいい。今、20代で古き良き時代の日本美人を思わせる女性を演じて、これほど嵌まる女優はいない。(これを書いた2005年にはまだ20代だった)松たか子でも無理だろう。
小津安二郎を意識した作品だが(そうわかるように意図的にカメラワークを真似ていたりする)、鈴木京香は「平成の原節子」のような役を振られている。男性の目から見て理想的な女性像であり、当然、男性の目には魅力的に映る。女性がどう思うのかは良くわからないけれど。

鈴木京香の演技を見るだけでも十分に魅力的な作品だが、ところどころに仕掛けられた「大笑いこそしないが、思わずクスッと笑ってしまう」エピソードの数々が心憎い。脚本の宮沢章夫の力も大きいのだろう。
登場人物の心理の描き方も、とても丁寧だ。

 

私が好きなのは、津田(竹中直人)と日比野ももこ(鈴木京香)が二人で夜道を歩くシーン。上から二人を追いかけているカメラが、会話が一段落したところで動かなくなり、遠ざかっていく二人を見送る。ここはラストへの伏線にもなっている。

 

音楽担当は忌野清志郎。「きみの港(肥沃なデルタ)」というスケベな歌詞を持つ歌で笑わせたり、「満月の夜」という歌でしみじみとさせたり。いい音楽だ。

古き良き日本を思わせる風景を探して、ロケハンは入念に行われたそうだ。撮影は静岡県沼津市を中心に、全国各所で行われたという。

淡々とした展開を見せる映画だが、「日本っていいな」と心から思える作品である。

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