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2020年8月21日 (金)

コンサートの記(649) シャルル・デュトワ指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団来日演奏会2005大阪

2005年11月12日 大阪・中之島の(旧)フェスティバルホールにて

大阪のフェスティバルホールで、シャルル・デュトワ指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会を聴く。曲目はプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」より抜粋と、ストラヴィンスキーの「春の祭典」。ロシアのバレエ音楽を並べたプログラムだ。

フェスティバルホールに行くのは久しぶり。3年半近く行っていなかった。しかも前回は演劇の公演(三谷幸喜の「オケピ!」の再演版)だったので、フェスティバルホールでコンサートを聴くのは初めてである。

フェスティバルホールはかっては大阪を代表するホールとして、大阪フィルを始め、多くのオーケストラがここで定期公演を行い、海外の演奏家やオーケストラも大阪で公演するときは必ずここを使った。

今は、大阪のクラシック音楽シーンの中心は、ザ・シンフォニーホールに移っているが(2005年当時)、観客が多数詰めかけることが予想されるコンサート、例えばウィーン・フィルの演奏会などは、よりキャパの広いフェスティバルホールを使うことが多い。
今回のコンサートもチェコ・フィルとデュトワという珍しい顔合わせなのでフェスティバルホールを選んだのだろう。

フェスティバルホールの内装は古ぼけてはいるが、ちょっと昔にタイムスリップしたようで雰囲気はいい。ただ、古いホールだけに、残響がほとんどなく、音には不満がある。

プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」は、フェスティバルホールのマイナス面が出てしまった。チェコ・フィルのメンバーもホールの空間の大きさを気にしたのか、本来の力を出せていないようである。弦楽は艶やかに鳴る「場面もあった」が、管、特に金管は低調である。
弦が艶やかに鳴る場面もあった、と書いたがこれは異例のことで、チェコ・フィルといえば、弦楽合奏の美しさで有名なのだ。その弦の力をそれほど感じなかったということは、ホールもそうだが、曲との相性も良くないのだろうか。

後半はデュトワの十八番、「春の祭典」。フェスティバルホールの乾いた音もこの曲には向いている。金管は思ったほど良くならなかったが、弦はプロコフィエフの時とは打って変わって生き生きしている。フェスティバルホールの天井桟敷で聴いたので、真の迫力が私の席まで届かなかったのは残念だが、名演であることは間違いない。ちなみに曲の最後の最後、フルートの後の一撃の時に、デュトワが勢い余って指揮棒を取り落とし、床を「カタカタン」と鳴らすというハプニングがあった。デュトワもチェコ・フィルのメンバーも聴衆も苦笑いという珍しい場面であった。

今回、チェコ・フィルを聴いて、「やはり中欧ナンバーワンオーケストラだけのことはある。凄い」という印象と、「こんな程度のものなのか?」という感想を同時に持った。音に厚みと温もりがある。密度も濃い。輝きもある。ただ、メカニックや、曲への適応力は、日本のオーケストラと大差ない。むしろデュトワが指揮するならNHK交響楽団の方が良い演奏をしたのではないか? と思える箇所もあった。

アンコールはチャイコフスキーの「白鳥の湖」よりワルツ。この曲にはトランペットの長く優雅なソロがあるが、どういうわけか、チェコ・フィルのトランペットソロは音程が怪しい上に、曲への共感が乏しいように見えた。デュトワは、ソロの聴かせどころではいつもするように他の楽器の音を抑えて、トランペットソロを浮かび上がらせていたが、このソロには不満だっただろう。

デュトワは日本でもお馴染みの名指揮者であり、私が最も好きな音楽家の一人である。チェコ・フィルも中欧、東欧含めて間違いなくトップオーケストラである。それだけに期待していたのだが、この組み合わせは思ったほど良くはなかった。チェコ・フィルはロシアものはあまり得意ではないのかも知れないし、ホールも影響していただろう。

ただ、一流の指揮者と一流のオーケストラが組めば即ち名演というわけではないことも確認出来た。いいものは自分で探さなくてはならない。ブランドに目をくらませることなく虚心坦懐になって。何事においてもそうだ。

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