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2020年9月 6日 (日)

コンサートの記(652) 京都フィルハーモニー室内合奏団第227回定期公演B~室内楽シリーズ Vol.3「京都で愛でるダンス音楽の夕べ」@京都文化博物館別館

2020年9月3日 三条高倉の京都文化博物館別館にて

午後6時30分から、京都文化博物館別館で京都フィルハーモニー室内合奏団の第227回定期公演B~室内楽シリーズ Vol.3 「京都で愛でるダンス音楽の夕べ」を聴く。客席は両隣最低1席は空けてソーシャルディスタンスを保っての開催である。

コロナ禍でもいち早く演奏を再開させて話題になった京都フィルハーモニー室内合奏団。今年の春からは柳澤寿男がミュージックパートナーに就任している。

 

京フィルこと京都フィルハーモニー室内合奏団の室内楽演奏は、マニアックな曲目を取り上げることで知られている。

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今日のプログラムは、ファルカシュの「17世紀の古いハンガリー舞曲」(フルート:市川えり子、オーボエ:岸さやか、クラリネット:松田学、ファゴット:田中裕美子、ホルン:山本愛沙子)、ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」より“秋”と“冬”(ヴァイオリン:森本真裕美、チェロ:石豊久、ピアノ:佐竹裕介)、トゥリンの「ファンダンゴ」(トランペット:山崎恒太郎、トロンボーン:村井博之、ピアノ:佐竹裕介)、ヨハン・シュトラウスⅡ世の「皇帝円舞曲」(第1ヴァイオリン:角田博之、第2ヴァイオリン:青山朋永、ヴィオラ:馬場順子、チェロ:石豊久、コントラバス:上野泰歳、ピアノ:佐竹裕介)。

京都市交響楽団を始め、関西のオーケストラのピアノパートを手掛けることの多い佐竹裕介が4曲中3曲に登場し、ほぼ主役状態である。関西のクラシックファンで京フィルのメンバーを一人も知らないという人は結構多いと思われるが、佐竹裕介を知らない人は稀だろう。それぐらい出まくっている。主に20世紀以降にオーケストラに加わるようになったピアノパートは、それほど人気というわけではないが、佐竹は「自分はピアニストだけれど、オーケストラのメンバーになりたい」という憧れをずっと抱いていたそうで、適職に就いたという感じである。

 

ファルカシュの作品は、タイトル通り、バロック以前の味わいを持つが、ファルカシュ自体は1905年に生まれ、2000年に没したという、比較的新しい時代の作曲家である。
ファルカシュ・フェレンツ(ハンガリー人であるため、姓・名の順の表記となる)は、ブダペスト音楽院を経てローマの聖チェチーリア国立音楽院で、レスピーギに師事しており、レスピーギ譲りの豊かな音の彩りを駆使して映画音楽の作曲家としても活躍したそうだ。ジェルジ・リゲティは弟子である。
「17世紀の古いハンガリー舞曲」は素朴さや明るさが特徴的であり、旋律も内容も分かりやすい。古い楽曲を現代風にアレンジするところなどは、師のレスピーギに範を取ったのだろうか。

演奏終了後にファゴットの田中裕美子がマイクを手に挨拶。マイクの前にはプラスチックボードが貼り付けてあり、飛沫が飛ばないよう工夫されている。今日は結構、人が入ったため(元々、京フィルの室内楽シリーズは曲目が魅力的ということで人気がある)、マイクを使っても後ろの方まで聞こえなかったようで、最初からやり直しとなったため、クラリネットの松田学に急遽出てもらい、5曲目の「跳躍の踊り」について語って貰っていた。

 

ヴァイオリニストの森本真裕美によるピアソラの「ブエノスアイレスの四季」の解説。1990年代半ばに起こったピアソラビームの影響もあり、今では「タンゴといえばピアソラ」という感じになっているが、ピアソラはパリ国立音楽院でナディア・ブーランジェに師事し、ブーランジェから「あなたはタンゴを書くべきだ」といわれ、祖国であるアルゼンチンに戻り、タンゴの作曲家としてスタートしている。クラシックの作曲法を学んだこともあって洗練されたタンゴを書いたが、「こんなタンゴじゃ踊れない」と祖国では評判が悪く、逃げるようにアメリカに移っており、アルゼンチンでタンゴの作曲家として認められた時にはすでに60歳を過ぎていたそうである。
ただクラシックをベースにしたタンゴであるため、世界のどこに行っても通じやすく、日本にもピアソラのファンは多い。ギドン・クレーメルのピアソラアルバムがベストセラーとなった時は、坂東玉三郎が広告やCDの帯でピアソラ愛を語っていた。

アルゼンチンは南半球にあるため、日本とは季節が真逆である。今は冬から春に向かう頃だ。

“秋”は、ヴァイオリンが駒より後ろの部分を奏でてギロのような音を出すなど意欲的な表現も目立ち、いかにもピアソラといった味わいの音楽だが、“冬”は家族で団欒の時間を過ごしているような親密な顔が覗く。あるいはヴィヴァルディの「四季」の“冬”より第2楽章が意識されているのかも知れない。

 

トゥリンの「ファンダンゴ」。アメリカの作曲家であるジョセフ・トゥリンは吹奏楽の世界では有名なようである。トロンボーンの村井博之がマイクを手に、新たに京フィルに加わったトランペットの山崎恒太郎を紹介していた。
「ファンダンゴ」は躍動感と推進力を特徴とする。元々は吹奏楽ための賑やかな曲のようで、YouTubeなどにもいくつか映像が上がっているが、室内楽バージョンは少し趣が異なる。

 

ラストの曲目となるヨハン・シュトラウスⅡ世の「皇帝円舞曲」。場面転換に時間が掛かるので(ステージスタッフは女性一人のみ)、第1ヴァイオリンの角田博之(すみだ・ひろゆき)がトークで繋ぐ。大体はWikipediaから拾ってきた情報だそうである。
個人的な思い出を書くと、工藤静香が若い頃に出演していたチョコレートのCMに「皇帝円舞曲」が使われており、CMの中で工藤静香が首を振って踊っていた情景が思い起こされる。誰かがYouTubeにアップしているようだ。

室内楽編成の「皇帝円舞曲」であるが、各パートの旋律がはっきり分かるという利点があり、京都文化博物館別館の独特の音響にも助けられて、華やかな仕上がりとなった。サロンでは昔からこうした編成で弾かれる機会も多いので、室内楽アンサンブルで聴くのも取りようによっては贅沢である。

アンコールは同じくヨハン・シュトラウスⅡ世の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」。勢いもある楽しい演奏である。ニューイヤーコンサートではないが、今年の前半はコロナで全て吹き飛んでしまったため、これが本当の意味での今年の始まりという気分にもなる。


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