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2020年9月 2日 (水)

観劇感想精選(350) 大竹しのぶ主演「母・肝っ玉とその子供たち 三十年戦争年代記」

2005年11月15日 西宮北口の兵庫県立芸術文化センター中ホールにて観劇

兵庫県立芸術文化センター中ホールで、「母・肝っ玉とその子供たち 三十年戦争年代記」を観る。「肝っ玉おっ母とその子供たち」というタイトルで知られるベルトルト・ブレヒトの戯曲を谷川道子が新たに翻訳したテキストを使用。音楽は初演時と同じパウル・デッサウの曲を使う。演出は栗山民也。出演は、大竹しのぶ、山崎一、秋山菜津子、中村美貴、永山たかし他。衣装:ワダエミ。

中ホールに入るのは初めてだが、思っていたよりも空間が小さい。1階席は埋まっていたようだが、私の座った2階席はガラガラ。当日券でも余裕で入れる。

舞台上には石の荒野のセット。塹壕のような穴があり、そこがオーケストラピットになっている。

栗山さん演出の舞台は何度か観ているが、これまで感心したことは一度もなかった。それで今回もやや不安だったのだが、嬉しいことに予想を超えて良い出来であった。何よりも役者達のアンサンブルがしっかりしている。

「母・肝っ玉」を演じる大竹しのぶの歌が、バンドの音にかき消されて歌詞が聞き取れなかった他は全て納得のいく水準。照明やセットの使い方は好みではなかったが、効果的であることは確かだし、私の好みなど正直どうでもいい。お薦めの舞台である。

舞台上手に鳥居のような形のセットが置かれていたせいで、前半は「肝っ玉」という言葉が、「靖×のは△」という言葉に重なって聞こえた。もちろん、そういった演出意図はないだろうし、後半では鳥居は半分に割れてしまい、「肝っ玉」の言葉の意味も変わってくるので解釈としても間違いなのだろうが、現在の時代状況に鑑み、もし私がこの本を演出するとしたなら本物の鳥居を出すかも知れない。

牧師(山崎一)のセリフにある「(戦争は)自由を与える」という言葉からはイラク戦争のコードネーム「イラクの自由」が連想される(他の翻訳では「解放する」という言葉が用いられている)。今の時期に「肝っ玉」を舞台にかけた背景には当然イラク戦争があるだろうから、意図的にわかりやすく翻訳したのだろう。

ブレヒト自身は「異化効果」がどうのこうのと言っているが、観客は基本的にはそんなものを意識する必要はない。観ていれば十分に面白いし感動出来る。ブレヒトは「母・肝っ玉」ことアンナの愚かさを伝えたいという意図を持ち、感動されることを好まなかったようだが、感動できない「肝っ玉」に意義はあるのだろうか?

有名俳優以外では、口のきけない長女・カトリンを演じた中村美貴の清潔感と、次男・シュワイツェルカス(スイスチーズ)役の永山たかしの感性の瑞々しさを感じさせる演技が特に印象的。

上演時間約3時間(20分の途中休憩時間を含む)の大作だが、長さは全く気にならなかった。

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