配信公演 小林沙羅ソプラノ・リサイタル「日本の詩(うた)」@浜離宮朝日ホール
2020年8月10日 東京・築地の浜離宮朝日ホールから配信
ソプラノ歌手の小林沙羅が東京・築地の浜離宮朝日ホールで行ったソプラノ・リサイタル「日本の詩(うた)」の、ぴあLiveStreamによる見逃し映像を視聴してみる。
曲目は、前半が、武満徹作詞・作曲の「小さな空」、山田耕筰の「この道」(詩:北原白秋)、山田耕筰の「赤とんぼ」(詩:三木露風)、 山田耕筰の「ペチカ」(詩:北原白秋)、中田章の「早春賦」(詩:吉丸一昌)、越谷達之助の「初恋」(詩:石川啄木)、武満徹の「死んだ男の残したものは」(詩:谷川俊太郎)、中村裕美の「智恵子抄」(詩:高村光太郎)より“或る夜のこころ”“あなたはだんだんきれいになる”“亡き人に”
後半が、早坂文雄の「うぐいす」(詩:佐藤春夫)、瀧廉太郎の「荒城の月」(詩:土井晩翠。変換したら「工場の付き」になったが、なんだそりゃ?)、宮城道雄の「せきれい」(詩:北原白秋)、宮城道雄作詞・作曲の「浜木綿」、井上武士の「うみ」(詩:小林柳波)、橋本國彦の「お六娘」(詩:林柳波)、橋本國彦の「舞」(詩:深尾須磨子)、小林沙羅自身が作曲した「ひとりから」(詩:谷川俊太郎。本邦初演)。
本来は、小林沙羅が3月にリリースした日本の歌曲アルバムのためのリサイタルとして企画されたのだが、コロナの影響で延期になり、真夏になってようやくの開催となった。小林がマイクを手に曲目を紹介してから歌うというスタイルである。
ピアノ伴奏は小林沙羅と一緒に仕事をすることも多い河野紘子。後半の「荒城の月」では箏の澤村祐司が伴奏を務め、2つの宮城道雄作品では澤村と尺八の三澤太基(みさわ・たいき)が二人で伴奏を務める。
1曲目の武満徹作品「小さな空」を歌い終わった小林沙羅は、約半年ぶりに聴衆と同じ空間で歌えたということですでに泣きそうになっていると告げる。
ただそうした感傷に浸ることなく、明るめの伸びやかな声で、小林は日本の歌曲を歌い上げていく。やはり歌声というのはどの楽器よりも馬力がある。
高村光太郎の「智恵子抄」に収められた詩に曲を付けた中村裕美(なかむら・ゆみ)は学生時代から小林と共にVOICE SPACEというユニットで活躍していた友人だそうである。
また、有名童謡の「うみ」や「お六娘」を作詞した小林柳波は、小林沙羅の曾祖父だそうだ。
日本におけるフランス音楽の紹介者でもあった橋本國彦の「お六娘」では一度止まってしまい、歌い直すというハプニングもあったが、オペラで培って演技力を生かした表現力豊かな歌を披露する。
またやはり橋本國彦の「舞」では、小林が10歳の頃から日本舞踊を習い続けているということで、タイトル通り「舞」を入れながらの歌唱となった。小林が舞いながら歌うことは、小林が衣装チェンジのために引っ込んでる間にピアノの河野紘子がマイクを手にアナウンスする。何の予告もなくいきなり本格的な日舞が始まったら聴き手も驚くだろうから、当然の措置であるが、河野の声を聴く貴重な機会ともなった。
王道の曲目も多いが、映画音楽などで知られる早坂文雄や「春の海」で知られる邦楽の大家、宮城道雄の歌曲も入れるなど、新たな試みも行っている。いずれもイメージにない作風を持つ曲である。
谷川俊太郎に頼んで詩を書いて貰い、小林自身が作曲した「ひとりから」は、「ホモサピエンス」と広い範囲を指す言葉を使用していたのが印象的であった。
アンコールとして、岡野貞一作曲の「ふるさと」が歌われる。小林は「本当は皆さんと一緒に歌いたいのですが」と述べる。新型コロナの感染に繋がるというので、客席で歌うことは推奨されていない。
最後の曲として小林沙羅作詞・作曲の「えがおの花」が歌われる。編曲は中村裕美で、ピアノ、箏、尺八伴奏版となっている。 ほのぼのとした良い曲であり、歌唱であった。
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