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2020年9月17日 (木)

これまでに観た映画より(209) 三谷幸喜 原作・脚本 市川準監督作品「竜馬の妻とその夫と愛人」

2020年9月14日

録画してまだ観ていなかった日本映画「竜馬の妻とその夫と愛人」を観る。市川準監督作品。原作・脚本:三谷幸喜。三谷幸喜が佐藤B作率いる劇団東京ヴォードヴィルショーのために書き下ろした舞台作品の映画化で、三谷幸喜もカメオ出演している。
2002年の映画であるが、意図的に「古さ」を出す画が撮られている。出演:木梨憲武、鈴木京香、江口洋介、橋爪功、トータス松本、小林聡美、中井貴一ほか。音楽:谷川賢作。

フォスター作曲の「金髪のジェニー」とアイルランド民謡「ダニー・ボーイ」の谷川賢作編曲版が何度も流れ、ノスタルジアをくすぐる。

舞台となるのは、明治13年(1880)である。坂本竜馬(トータス松本。回想シーンのみの出演)の13回忌が京都の霊山で大々的に執り行われることが決まり、勝海舟(橋爪功)は竜馬の妻であったおりょう(鈴木京香)の動向を気にしている。13回忌にはおりょうにも出席して貰いたいのだが、今でも彼女が坂本竜馬の妻に相応しい生き方をしているのかどうか。勝はおりょうの義理の弟(おりょうの妹であるきみえの旦那)に当たる菅野覚兵衛(中井貴一)におりょうの様子を探るよう命じる。
菅野覚兵衛は、千屋寅之助を名乗っていた時代に土佐勤王党や海援隊に所属していた実在の人物であり、竜馬亡き後、おりょうの面倒を見ていたことがある。

おりょうは西村松兵衛(木梨憲武)と再婚し、神奈川県横須賀市のボロ長屋で暮らしていた。旦那の松兵衛はテキ屋などをして暮らしている甲斐性のない男であり、竜馬の妻の今の夫として相応しいとは思えない。実は覚兵衛は以前、松兵衛に海軍の仕事を世話してやったことがあるのだが、松兵衛のうっかりミスが原因ですぐにクビになってしまっている。

横須賀のテキ屋の元締めとして頭角を現している虎蔵という男(後に「新選組!」で坂本龍馬を演じることになる江口洋介が扮している。虎蔵の名は、おりょうに懸想していたことでも知られる近藤勇の愛刀・虎徹に由来するのかも知れないが本当のところはよくわからない)を、おりょうは気に入る。竜馬と同じ土佐出身で、土佐弁を喋るが、虎蔵は坂本竜馬なる人物は知らないと語る。豪放磊落で北海道での開拓を夢見るという虎蔵の姿勢にもおりょうは竜馬を重ねていた。

おりょうが虎蔵に走りそうになっているのを感じた松兵衛は覚兵衛と組んで剣術の稽古をするなど、なんとか虎蔵を上回ろうとするのだが……。

 

今は亡き坂本竜馬に取り憑かれている人々を描いた作品である。ある者は坂本竜馬に憧れて少しでも近づこうとし、ある者は研究を重ねて竜馬になりきろうとし、ある者は竜馬以上の男は現れないとして、思い出に生きようとしている。
ただ、これもいかにも三谷幸喜作品らしいのだが、「生きていることが一番だぞ」という強烈なメッセージが発せられている。結局のところ、今はいない存在に身を委ねても人生がややこしくなるだけであり、そもそもそんな人生では「自分の人生を生きた」とは到底言えないものになってしまうであろう。

鈴木京香が宮本武蔵(役所広司が演じていた)の奥方であるお鶴役で出演した舞台「巌流島」(1996)を想起させるシーンがいくつも出てくるが、おりょうの現在の名前は楢崎龍ではなくて西村ツルであり、三谷幸喜が意図的に重ねている可能性もある。

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