観劇感想精選(351) 劇団東京ヴォードヴィルショー 「竜馬の妻とその夫と愛人」2005大阪
2005年11月18日 大阪・京橋のシアターBRAVA!にて観劇
大阪へ。大阪城ホールの向かいにある、シアターBRAVA!で劇団東京ヴォードヴィルショーの「竜馬の妻とその夫と愛人」を観る。三谷幸喜:作、山田和也:演出。東京サンシャインボーイズの作・演コンビによるもの。タイトルはおそらく、ピーター・グリーナウェイ監督の映画「コックと泥棒、その妻と愛人」をもじったものだと思われる。
出演は佐藤B作、平田満、あめくみちこ、佐渡稔。
シアターBRAVA!はかつてのMBS劇場。TBSのそばにあった赤坂ACTシアター(現在はTBSの敷地再開発にともない消滅)に内装が似ている。やはり系列局の劇場ということで設計者が同じなのだろうか(後記:シアターBRAVAは2016年に閉館した)。
「竜馬の妻とその夫と愛人」は2000年に、同じく劇団東京ヴォードヴィルショーにより初演。その後、映画化もされた。今回は5年ぶりの再演となる。
明治12年(1879)、神奈川県横須賀市。坂本龍馬の妻であったお龍(あめくみちこ)は西村松兵衛と再婚していた。この年、京都・霊山で坂本龍馬の13回忌が盛大に行われることとなり、お龍の義理の弟(お龍の妹の旦那)である覚兵衛(佐藤B作)が、是非参加を、と依頼に来る。しかし、お龍は朝から飲み歩き、虎蔵(佐渡稔)という愛人まで作っているというだらしなさ。旦那の西村松兵衛(平田満)もぱっとしない男である。
実は覚兵衛は、勝海舟から「もし、お龍が坂本龍馬の妻として相応しくない女になっていたなら斬り捨てよ」という密命を帯びていた。
1996年に上演された「巌流島」に非常によく似たスタイルを持つ劇である。「巌流島」に登場する情けない男、蟻田休右衛門を主人公にして焼き直したような印象すら受ける。実際、セリフの使い回しもある。というわけで新鮮さには欠けるきらいあり。
自己中心的な性格のお龍に三人の男が振り回される。男達はみな、お龍が好きなのだが、彼女は龍馬以外は誰をも愛すことが出来なくなっていた。運命の人に出会いながら、一人残されてしまった女の寂しさは良く出ている。
「俺は龍馬には敵わないが、一つだけあいつに勝てることがある。俺は生きている。龍馬はお前の心の支えかも知れないが、あいつはお前に何もしてやれない。俺はお前に何だってしてやれる」という松兵衛のセリフが、生きること、生きていることの価値と大切さを語る。このセリフに励まされる人も多いだろう。
ブラックユーモアの効いたラストも面白い。龍馬ファンは怒るようなラストだったけれど。
目新しさや鋭さはないが、まずは上質な劇である。4人の俳優もしっかりしたアンサンブルを見せてくれる。エンターテインメントの精神を忘れていないのも心強い。
余談だが、開演前に、隣りに座ったおばちゃんから黒豆せんべいを貰った。落としたチラシを拾ったお礼だと思う。いかにも大阪のおばちゃんらしい温かさで心和む。
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