観劇感想精選(361) 五反田団 「ふたりいる景色」
2006年5月27日 京都芸術センターフリースペースにて観劇
京都芸術センターへ。フリースペースで東京の劇団である「五反田団」が公演を行うのだ。
五反田団の「ふたりいる景色」は午後7時30分開演。作・演出:前田司郎。
セットも照明も最小限のものに留めたシンプルな舞台である。
いい年をして何をするでもなく部屋に閉じこもっている男(金替康博)と、その男を愛してしまい、同棲している女(後藤飛鳥。役名はヒトミだが、配役表には単に「女1」としか記されていない)。男は食事もろくに摂らず、胡麻ばかり食べている。悪い男ではないのだろう。むしろ人柄は良いかも知れない。しかし、社会能力が完全に欠如している。
胡麻だけを食べて、「即身仏になる」などと男は言い、女はそんな男に呆れながらも離れることが出来ない……。
駄目な男(かつては今ほど駄目男ではなかったのだろうが)を愛してしまった女のこんがらがってしまった感情や切ない思いが惻々とこちらの胸に迫る。「何故?」、「どうして?」と内面で自問しながらも男のことが好きで好きで離れられない女。しかし、男は無邪気というのか、想像力に欠けるというべきか、視線も興味も自分自身にだけ向いている。自己本位で完結していればまだ良いのだが、男は本当の孤独は苦手のようだ。男は誰かを求めているのだが、それは心からヒトミを求めているということではないようだ。愛さえも曖昧な「意識」。
実は男の元彼女である、ヒトミの親友(女2)や、胡麻の精である妙な女(女3)なども登場し、話が暗くなりすぎたり、一本調子になったりするのを避け、観客が男に対して持つ可能性のあるイライラ感も絶妙に逸らしている。
ラストで旅行に出かける二人。問題は解決せず、二人は袋小路のような所に追いつめられているのだが(はっきりと示されてはいないが)、暗さを感じさせないのもまた良し。
正真正銘の駄目男に見事に成りきってみせた金替康博の演技は説得力もあり、流石と思わせる。
| 固定リンク | 0
« スタジアムにて(29) 読売ジャイアンツ対東京ヤクルトスワローズ@大阪ドーム 2006.4.19 | トップページ | コンサートの記(665) クリスチャン・ツィメルマン ピアノリサイタル2006京都 »
コメント