これまでに観た映画より(233) レオポルド・ストコフスキー出演 「オーケストラの少女」
2006年8月27日
DVDでアメリカ映画「オーケストラの少女」を観る。1937年の作品。往年の名指揮者レオポルド・ストコフスキーが本人役で出ている。
ニューヨーク。パトリシア(愛称:パッツィ)の父親であるジョンは腕の良いトロンボーン奏者なのだが、第二次世界大戦前の混乱期ということもあり、2年もの間失業状態にある。レオポルド・ストコフスキーが指揮するオーケストラに売り込みをかけるジョンだったが、スタッフから「募集はしていない」と演奏も聴いて貰えずに追い返される。帰りのタクシー乗り場でたまたま財布を拾ったジョンはその財布を劇場に届けようとするが、勘違いしたスタッフに「しつこい」と追い返される。しかたなく財布を預かって家に戻ったジョンだったが、大家さんから家賃をせがまれて拾った財布からお金を出して払ってしまう。それを見たパッツィはジョンがストコフスキーのオーケストラに採用されたのだと思い込んで大はしゃぎ。父親のジョンも娘を落胆させないために演技をするのだが、ばれてしまう。
財布に名前があったのでその持ち主フロスト夫人の元に返しにいくパトリシア。しかしお金持ちで気まぐれのフロスト夫人はオーケストラを新たに創ろうという考えに冗談半分でOKを出してしまう。
パトリシアは早速、失業音楽家を集めてオーケストラを編成するのだが……。
展開の速さと嘘くささが特徴の映画だが、これは20世紀前半の大人のためのお伽話。おかしなところを指摘するのは簡単だが、それは野暮というものだろう。
製作年代が古いということもあって音声に難ありで、音が潰れて聞き苦しい場面もあるのだが仕方ないだろう。
失業音楽家の寄せ集めオーケストラが、顔を合わせてすぐにまとまったアンサンブルを示すのは不自然に見えるが、実は第二次大戦後のロンドンで失業楽団員を中心に編成されたフィルハーモニア管弦楽団というオーケストラが生まれている。大戦後の混乱でソリスト級や首席奏者クラスでありながら仕事にあぶれていた音楽家が数多く入団したため極めて高度なアンサンブルを持つこと知られ、ヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮で残した録音がフィルハーモニア管のレベルの高さを示している。というわけで、優れた演奏家というものは集まってすぐに高度なアンサンブルを示しても不思議ではないのかも知れない。
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