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2020年12月 3日 (木)

これまでに観た映画より(230) 村上春樹原作 市川準監督作品「トニー滝谷」

2006年8月21日

DVDで映画「トニー滝谷」を観る。村上春樹の短編小説の映画化。脚本・監督:市川準、音楽:坂本龍一、イッセー尾形&宮沢りえ主演。

村上春樹の小説は映像化は難しいが、市川準監督は、小説の地の文をナレーション(ナレーター:西島秀俊)として読ませることで、映像詩のような作品に仕上げた。

地の文は西島秀俊だけでなく、イッセー尾形や宮沢りえも(それも敢えて不自然なタイミングで)読み上げる。他にも場面転換は全て画面右から左へのスクロールで処理するなど、独特の手法が用いられている。

トニー滝谷と結婚する英子を演じる宮沢りえが好演だ。明るいが影のある女性を見事に演じてみせる(暗いことと影があることは違う)。

染みとおるような孤独感。不在ゆえに引き立つ存在感。空白を埋めるための強迫行為(OCD)。描かれていることは切実だが、市川準監督の視線は優しい。

坂本龍一の音楽も空漠とした雰囲気作りに大いに貢献している。

傑作ではないかも知れないが、愛すべき佳作である。

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