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2021年1月29日 (金)

観劇感想精選(382) 三谷幸喜 作・演出「コンフィダント・絆」

2007年5月10日 大阪・京橋のシアターBRAVA!にて観劇

大阪へ。京橋のシアターBRAVA!で、三谷幸喜:作・演出の「コンフィダント・絆」を観るためだ。

「コンフィダント・絆」は、19世紀末のパリ画壇を描いた作品。フィンセント・ファン・ゴッホとポール・ゴーギャンがクロード・エミール・シュフネッケルという売れない画家を通して知り合いだったことを手がかりに、もし当時、パリに住む画家達が共同のアトリエを持っていたら、という設定で書かれた劇である。登場人物は、ゴッホとゴーギャンとシュフネッケルの3人に加え、本当は世代が異なるが、中井貴一に演じさせたい画家としてジョルジュ・スーラを加え、更に男だけの芝居にはしたくなかったということで、画のモデルとしてルイーズという架空の女性(堀内敬子)を入れ、5人による芝居とした。
出演は、中井貴一、寺脇康文、相島一之、堀内敬子、生瀬勝久。音楽&ピアノ生演奏:荻野清子。
生瀬勝久がゴッホを、寺脇康文がゴーギャンを、相島一之がシュフネッケルを演じる。

スーラが陰で「点々」(スーラは点描による画風が特徴である)とあだ名されていたり、ゴッホは観たものしか書けないが、とにかく良く観るという性質を付け加えるなど、画家の群像劇として上手く設計されている。そして最後にシュフネッケルの悲劇が待ち受けている。

良く出来た芝居であった。笑えたし、感動できる要素も盛り込まれていた(私自身は感動はしなかった)。三谷幸喜本人が二幕目の頭に登場してボタン式のクロマチック・アコーディオンを奏でる(大阪公演ということで、冒頭には「六甲おろし」のフレーズも挿入。笑いを取る)というサービスもあった。
ただ、三谷の芝居を何本も観ているためか、類型化、そして類型から逃れようというパターンまで看取出来てしまった。「三谷ならこうするだろうな」と思った通りになる。
こういう時は、自分が芝居好きであることが呪わしくなる。

20代前半の頃、BSで放送された三谷作の芝居をビデオに録画して何度も何度も観た。それはそれは楽しかった。だが、そうやって楽しみすぎてしまったために、今では三谷の芝居に対して新鮮な気持ちで臨むことが出来なくなったようだ。
三谷幸喜という人間は一人しかいない。一人の人間が長いこと同じ仕事を続けていて類型化から逃れることは難しい。一人の力で生み出せるものは実はそう多くはないということなのだろう。歴史上に残る芸術家達も、そのほとんどが類型化や自己模倣と戦ってきたのだ。

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