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2021年1月24日 (日)

これまでに観た映画より(242) 周防正行監督作品「それでもボクはやってない」

2007年3月15日 TOHOシネマズ二条にて

TOHOシネマズ二条で周防正行監督作品『それでもボクはやってない』を観る。久しぶりに映画館に行ったが、「映画館で観ることが出来て良かった」と思える作品に久々に当たった。秀作であった。

『それでもボクはやってない』は、『Shall We ダンス?』から11年ぶりとなる周防監督の新作。周防監督は『Shall We ダンス?』公開後は著述業やプロデューサー業をしながら、「どうしても撮りたいもの」を探し続けており、2002年の秋から痴漢冤罪事件に関する取材を開始、30件、200回以上に渡る裁判を傍聴、約200人に話を聴き、200冊以上の参考文献に目を通し、取材時期は3年以上に及んだという。
周防監督はもともと題材を丹念に探し、取材を徹底して行うタイプだが、3年以上というのは異例である。

監督・脚本:周防正行。主演:加瀬亮。出演:役所広司、瀬戸朝香、山本耕史、もたいまさこ、小日向文世、尾美としのり、鈴木蘭々、光石研、正名僕蔵、唯野未歩子(ただの・みあこ)、NHKドラマ「ハゲタカ」で知名度が急上昇中の大森南朋(おおもり・なお)、そして周防ファミリーである竹中直人、田口浩正、清水美砂(のちに清水美沙に改名)らが出演している。

笑えるエンターテインメントを作ってきた周防正行監督だが、今回の『それでもボクはやってない』は、取り調べから裁判の過程を通して「人間」の問題を問うた極めてシリアスでシビアな作品である。

配役の妙もある。裁判長に善人も悪人も巧みに演じる小日向文世を当てたことでスリルが増す。痴漢被害者で、加瀬亮演じる金子徹平を誤認逮捕する女子中学生役には真面目で可愛らしく傷つきやすい雰囲気を持ち、声も幼い感じの女の子(柳生みゆ)を起用、徹平や観客の「冤罪を作ってしまった者に対する憎悪」を見事に逸らしてしまう。またミステリアスな雰囲気を持つ唯野未歩子を「痴漢でないことを見ていた」証言者として用いたのも効果的だ。

検察の取り調べのシーンもあるが、例えばキムタク主演のテレビドラマ『HERO』のようなちゃらちゃらしたものではなく、自然に身につけてしまう悪意を前面に出すなど、非人間性の表れを冷徹に示してみせる。

エンターテインメントというと、出演者が騒いで楽しく楽しくというものをイメージするが、『それでもボクはやってない』もエンターテインメントだ。そして『HERO』と『それでもボクはやってない』どちらがエンターテインメントしているかと聞かれたら、私は『それでもボクはやってない』の方が『HERO』の100倍エンターテインメントしていると答えるだろう。

『それでもボクはやってない』は観る者に普通とは違った意味での肯定を与える。勇気づけられる人も多いはずだ。

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