祇園甲部「春の雅」2021.4.14
2021年4月14日 ギオンコーナー&八坂倶楽部にて
午後2時から、弥栄会館内ギオンコーナーで、祇園甲部「春の雅(みやび)」を観る。
新型コロナウイルスの流行により、都をどりは2年連続で中止となったが、今年は代替公演として「春の雅」が行われることになった。
ギオンコーナーは、観光客向けに、舞妓による京舞を始め、華道、茶道、狂言、箏曲、雅楽、文楽などの文化をダイジェスト紹介する施設であり、私もこれまでに一度だけ行ったことがある。
舞台も客席部分も小規模な施設で、しかも客席は前後左右1席空けのソーシャルディスタンスシフトである。今年の都をどりは無くなったが、祇園甲部の芸舞妓の公演が観られるとあって人気で即日完売となり、チケットが手に入ったのは、結局、今日のこの回だけであった。
ギオンコーナーで行われる「芸妓舞妓の舞」は、3つの演目のローテーションで、今日は、「夜桜」、「四季の花」、「芦刈」、「六段くずし」の4つの演目が上演される。3つあるローテーションのうち「六段くずし」だけは全てで上演されるようだ。
上演開始前に、祇園甲部芸妓組合組合長のまめ鶴からの挨拶があり、今日の司会である孝鶴にバトンタッチ。孝鶴は、それぞれの舞の見所や背景などを紹介する。
「夜桜」の出演は、芸妓の小花と舞妓のあす佳と菜乃葉。「四季の花」が芸妓の真咲と佳つ雛。「芦刈」が芸妓の美帆子。「六段くずし」では、真咲、菜乃葉、佳つ雛、あす佳が出演する。舞台が狭いということもあるが、舞台上で密になることは避ける必要があるということで、最大でも4人という小編成での舞である。
地方(じかた)は、「夜桜」が、君鶴、福奈美、幸苑。「四季の花」は、小桃、だん佑、幸苑。「芦刈」は、ます穂、幸苑、福奈美。「六段くずし」が、君鶴、福奈美、恵美華。地方の前に透明のボードを置くという飛沫対策が取られている。
かげ囃子は、小萬(笛)、豆千鶴(小鼓)、真生(太鼓)。藤舎清鷹。
4演目合計で1時間以内という小規模公演。途中で、司会の孝鶴が、舞妓の菜乃葉と地方の恵美華にインタビューするコーナーがある。菜乃葉は舞妓4年目の「大きい舞妓さん」、恵美華は地方1年目の新人だそうである。菜乃葉は一昨年に南座で行われた都をどりが初出演となったが、2年連続で都をどりが中止になったため、今のところ都をどりへの出演は一度きりとなっているようである。「早く祇園甲部歌舞練場でも踊りたい」と語っていたが、祇園甲部歌舞練場の耐震改修工事はほとんど進んでいないようで、今日も寄付を募っていた。弥栄会館は模様替えされて京都帝国ホテルとなる(祇園甲部からの貸借という形態)が、それも祇園甲部歌舞練場改修工事の資金に充てるためなのかも知れない。
当然と言えば当然なのだが、芸妓の方が優れた舞を見せる。手もピシッと止まるが、腕と体との距離も芸妓の方が近く、無理なくキレを出すことが可能となっている。
上手さだけでなく個性も重要となってくるが、今日はそれぞれに良い味を出せていたように思われた。
都をどりの華やかさには比ぶべくもないが、花街公演の礎を築いた祇園甲部が何もない春を迎えるよりはましである。上演会場も小さいだけに、京舞も間近で観られて、手作り感があるのも良い。
とはいえ、来年は都をどりが観たいところである。
「春の雅」の芸妓舞妓の舞を観た人は、そのチケットで八坂倶楽部のお庭公開にも無料で入ることが出来る。芸妓舞妓の舞を観ずに(もしくはチケットが手に入らずに)お庭公開だけの人は当日料金500円が必要になる。
芸妓舞妓の舞が、午後2時50分過ぎに終わり、それを待つようにして午後3時からは八坂倶楽部で舞妓による「祇園小唄」上演がある。密を避けるために整理番号の若い人は八坂倶楽部の1階で、それより大きい番号の人は2階の大広間で「祇園小唄」を観ることになる。まず1階での上演があり、終わってすぐに2階での上演が始まる。今日の出演は、真矢と佳つ駒の二人。共に昨年、見世出しを行ったばかりで、まだ駆け出しである。比較しなければということではあるが、よく踊れていたように思えた。間近で観られるというのも良い。
八坂倶楽部の庭園は改修工事中で池に水も少なく、今年は桜ももう散ったということで華やかさには欠けたが、青もみじなどは美しく、初々しい舞妓の踊りに重なったりした。
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