ロームシアター京都 ハンブルク・バレエ団 「ベートーヴェン・プロジェクト」映像上映会
2021年3月21日 ロームシアター京都サウスホールにて
午後1時から、左京区岡崎のロームシアター京都サウスホールで、ハンブルク・バレエ団の映像上映会、「ベートーヴェン・プロジェクト」を観る。
本来は、この3月にハンブルク・バレエ団の来日公演として「ベートーヴェン・プロジェクト」の日本初演がロームシアター京都メインホールで行われるはずだったのだが、コロナ禍によって来日不可となり、代わりに「ベートーヴェン・プロジェクト」とコロナ下に制作された新作「ゴースト・ライト」の上映会が行われることになった。昨日と今日、「ベートーヴェン・プロジェクト」が午後1時から、「ゴースト・ライト」が午後5時から上映される。ということで今日2本とも観ることが可能なのだが、バレエの映像を1日2回観たいと思うほどバレエ好きではない。
「ベートーヴェン・プロジェクト」は、2018年に初演された作品。映像は2019年10月にバーデン=バーデン祝祭劇場で行われた上演を収めたものである。この映像はBSプレミアムの「プレミアムシアター」で放送されており、またDVDやBlu-rayも発売されていて、家庭でも観ることが出来る。振付:ジョン・ノイマイヤー。第1部のピアノ演奏:ミカル・ビアウク。第2部と第3部の演奏は、サイモン・ヒューイット指揮のドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団。映像監督はミリアム・ホイヤー。
第1部「ベートーヴェン・フラグメント」、第2部「プロメテウスの創造物」、第3部「エロイカ(英雄)」の3部からなる。
第1部「ベートーヴェン・フラグメント」。プロメテウス主題が登場する「エロイカ変奏曲」が演奏される。3部ともプロメテウス主題が登場する作品が演奏され、人類に叡智を与えたプロメテウスと人類そのものへの讃歌が奏でられる。
ベートーヴェン自身を演じているのは、アレイズ・マルティネス。ベートーヴェン本人も推定身長165センチと、当時の西洋人としてもやや小柄だったようだが、マルティネスも他の男性バレエダンサーと比較して明らかに背が低いダンサーである。女性ダンサーよりも小さいかも知れない。
マルティネスが演じているベートーヴェンは、おそらくまだ若い頃、ハイリゲンシュタットの遺書を書いた時代だと思われる。
ピアノの足に絡みついていたマルティネスは、プロメテウス主題に合わせて踊る。やがて高貴な身分を表すと思われるマントを羽織った男性ダンサーが登場するが相手にされない(貴族に憧れつつも果たせないベートーヴェンの心情を表現したようである)。男性ダンサー二人組と楽しく踊った後で、男女のペアが現れる(女性ダンサーはアジア系である)。男女のペアとも楽しく踊るベートーヴェンだが、結局、ペアはペアのまま去り、先程現れた男性ダンサー二人組も、新たに現れた女性ダンサーに夢中になり、ベートーヴェンに構ってくれず、最後にはベートーヴェンは突き飛ばされて横転してしまう。その後、花嫁衣装のダンサーが現れるが、彼女はピアニストにご執心というわけで、作曲家の孤独が描かれている。やがてベートーヴェンは芸術そのものを恋人とし、人生を捧げることを誓う(セリフがないので「ように見える」というだけで、ノイマイヤーの実際の意図は不明である)。すると、それまですげなくしていたダンサー達が音楽の精として生まれ変わったように快活なダンスを披露し、最後はベートーヴェンを掲げて礼賛する。
続いて演奏されるのは、ピアノ三重奏曲「幽霊」である。不協和音が印象的な作品として知られている。赤いドレスの女性ダンサーが登場し、ベートーヴェンとパ・ド・ドゥを行うのだが、やがて彼女はすでに亡き人となっていることがうつ伏せに横たわることで示される。赤いドレスの女性ダンサーはその後に一度起き上がるのだが、それはベートーヴェンに喪服を着せるためであり、その後、男性ダンサー二人に仰向きに掲げられて退場する。恋人のように見えたのだが、実際はベートーヴェンの母親であるマリアであったようだ。赤い服を着た女性ダンサーはもう一人現れ、こちらが「不滅の恋人」のようである。
突然、金属音が混じり、録音によるピアノの演奏が奏でられる。宿痾となった難聴の始まりである。やがてピアニストのミカル・ビアウクもベートーヴェン役のマルティネスと視線を交わして退場する。悲劇の予兆だが、ベートーヴェンはそれを乗り越えていく。
第2部「プロメテウスの創造物」では、ベートーヴェンの母親役だと思われる女性ダンサーがこれから演奏される曲目について解説を行う。ドイツ語で、日本語字幕もないため何を言っているのかよく分からないが、ベートーヴェン作曲の「プロメテウスの創造物」からの2曲が演奏されると言っていることだけはなんとなく分かる。
第2部は第1部と異なり物語性は低め。天上の描写があり、アポロ神を始めとする多くの神々がベートーヴェンを祝福する。
第3部の「エロイカ(英雄)」。こちらも第2部同様、エネルギッシュでバリエーションに富んだ表現が中心だが、第2楽章の葬送行進曲だけは人一人の死というよりも何らかの崩壊が描かれているようであり、強い悲劇性を帯びている。
ハンブルク・バレエ団であるが、東アジア人のダンサーがかなり多い。特にアジア人女性ダンサーは重要な役割を担っている。エンドクレジットで確認したところ、日本人、中国人、韓国人の全てが含まれていることが分かった。日本人女性ダンサーは二人いて、有井舞耀(ありい・まよ)と菅井円加であることが確認出来た。
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