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2021年4月 1日 (木)

観劇感想精選(389) 燐光群+グッドフェローズプロデュース公演「ローゼ・ベルント」

2008年7月16日 尼崎市塚口の兵庫県立ピッコロシアターにて観劇

午後7時から、尼崎市の兵庫県立ピッコロシアターで、燐光群+グッドフェローズプロデュース公演「ローゼ・ベルント」を観る。原作:ゲアハルト・ハウプトマン(底本 番匠谷英一訳『枯葉』)、上演台本&演出:坂手洋二。タイトルロールを演じるのは占部房子。出演はほかに、大鷹明良、猪熊恒和、鴨川てんし、大西孝洋、西山水木、嚴樫佑介、中山マリ、川中健次郎など。

ドイツの劇作家、ゲアハルト・ハウプトマン(1862-1946)の戯曲を、坂手洋二が比較的自由に翻案した本が用いられている。役名もドイツ人のもので、場所もドイツなのだが、官庁の名前が「文部科学省」だったり、結婚の日に大安か友引を選んだり、「地球の裏側のブラジルに移民しよう」というセリフがあるなど、実質的には日本が舞台となっている。遠い異国の出来事ではないということだ。

牛肉偽装事件が出てきたり、「現代の『蟹工船』諸君!」というセリフがあったり、時事問題を扱っているのがいかにも坂手洋二らしい。


「ローゼ・ベルント」という題名で、主人公もローゼ・ベルント。そしてローゼ・ベルントを巡る劇であるにも関わらず、(ここが逆説的であるが)実はローゼ・ベルントを描いた劇ではない。

ローゼ・ベルントは一個人でありながら、単なる一個人ではなく女性の歴史を体現しており、一方でローゼ・ベルントは一個人ですらなく、ある種の視座に過ぎないと見ることも出来る。私がこの劇の真相に迫れたのは現時点ではここまでである。記憶を辿りながら考える作業を進めれば、もっと深部まで行き着けるかも知れない。

ストーリー的には難解ではないのだが、背景に隠された巨大なものを読み解くのはなかなか容易ではない舞台である。


ローゼ・ベルントを演じた占部房子が大変な熱演。また、燐光群メンバー最古参ということもあって普段は落ち着いた紳士やリーダー格を演じることの多い猪熊恒和が、今回は頭は切れるが乱暴で残忍な悪役(シュトレックマン役)を演じているというのも面白かった。

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