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2021年5月17日 (月)

2346月日(32) 凝然国師没後七百年「特別展 鑑真和上と戒律のあゆみ」(後期展示)

2021年5月12日 東山七条の京都国立博物館にて

本来なら今日(5月12日)が緊急事態宣言の開ける日だったのだが、今月31日まで延長となっている。一方で、京都国立博物館は今日から営業再開となる。特別展「鑑真和上と戒律のあゆみ」は開催期間の延長はなされず、予定通り16日までであり、今日以外は他の用事が入っているため、行けるのは今日だけ、ということで行く。前期の展示は観たが、後期のみの展示物も比較的多い。国宝の鑑真和上坐像と、籔内佐斗司の新作・凝然国師像にももっとじっくり向かい合いたいという思いもある。前回も両像は頭に焼き付けた、つもりが後で確認すると鑑真和上像の衣の色を覚え間違えるというイージーミスがあり、やはり期間中に鑑真和上坐像と再会して頭に入れる必要がある。

最初の展示からしてまず違う。4月20日から展示が始まった「三国祖師影」である。大谷大学博物館の所蔵品で、日本からは行基、そして聖徳太子の絵が描かれている。聖徳太子に関しては、「観音ノ後身」と記されているのがわかる。インドからは鳩摩羅什(くまらじゅう)、唐からは玄奘三蔵などが選ばれている。

『懐風藻』の選者とされる淡海三船が編纂した『唐大和上東夷伝』の見開き1頁目も後期のみの展示である。

聖武天皇の像は前期に展示されていた単独のものではなく、行基、インド出身で大仏開眼供養の導師を務めた菩提僊那(ぼだいせんな)、東大寺の開山で歌舞伎などでもお馴染みの良弁(ろうべん)を加えた「四聖御影」となっている。

上座部仏教の最大勢力であった説一切有部の史料も展示されている。隆盛を極めた説一切有部であるが、今では説一切有部自体もその後継宗派も一切残っていないということに無常を感じる。

余りじっくり見る時間はないが、前期のように部分的でもパッと見て意味が分かる文章は少ない。
凝然筆の文書も新しいものがいくつ展示されている。内容は分からないが、文字の丸さが特徴となっている。純粋な個性なのか、梵字を真似た書体を好んだといったような理由があるのかは不明だが、かなり不思議な字を書く人であるということは分かる。

戒律から離れた宗派の祖として法然上人と親鸞聖人の絵も展示されている。「親鸞聖人像」は前期と一緒だが、知恩院版「法然上人絵伝」は前期が巻五、後期が巻十の展示である。
くずし字が読めないのだが、冒頭に「後鳥羽院」とあるようなので、承元の法難絡みだろうか。絵からはどういう状況なのかは分からない。門から僧兵の格好をした人物が嘲るような態度で逃げていくのが確認出来るため、念仏停止の場面なのかも知れない。
図録には説明が載っているはずだが、そこまで仏教に詳しくなる必要はないと個人的には思っている。

絵による「鑑真和上像」。前期は東大寺のものだったが、後期は大阪の久米田寺に伝わるものが展示されている。共に鑑真和上坐像を基に書いたものだけに、顔はよく似たものだが、布などの描き方に個性が表れている。

その鑑真和上坐像。弘法大師坐像、興正菩薩(叡尊)坐像と共に、前期と展示が変わっていない。鑑真和上坐像などはよく見ると、睫毛なども描かれていることが確認出来る。大和の西大寺を復興した叡尊は、眉毛がかなり特徴的である。眉のみならず表情も村山富市に似ているが、村山富市は社会党の存在意義をなくし、現在に至るまでの政界の混乱を招いた罪な人なので、生まれ変わりだとかそういったことはないだろう。

前期もあった展示ながら、記憶に残っていなかった朝鮮半島伝来の「梵網経」を見る。「梵網経」は鑑真が受戒の際に用いた大乗経典である。
展示されている「梵網経」は、朝鮮の裴氏から伝わったとあるが、朝鮮系の裴という苗字は今では日本でも有名なものとなっている。「裴」は「ペ」と読む。ペ・ヨンジュンやペ・ドゥナのペである。

新作である籔内佐斗司の凝然国師像は、余り話題になっていないが、やはり大変な傑作であると思われる。出来たばかりの傑作に接する機会は、そうそうあるものではない。

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